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 グローバル決済大手のオランダAdyenが日本事業を本格化させた。国をまたがるオンライン、モバイル、店頭での決済を1つのプラットフォームで可能にしているのが特徴で、米Meta Platforms(旧Facebook)や米Uber Technologies、スウェーデンSpotifyといったグローバル企業が顧客に名を連ねる。2021年の処理数は前年比70%増の5160億ユーロ相当、売上高は同46%増の10億ユーロに達した。2022年2月にAdyenの日本カントリーマネージャーに就任したJonathan Epstein氏に、日本での事業戦略を中心に聞いた。

Adyen 日本カントリーマネージャーのJonathan Epstein氏
Adyen 日本カントリーマネージャーのJonathan Epstein氏
(写真提供:Adyen)
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他社のグローバル決済プラットフォームと、Adyenが提供するプラットフォームの違いは何か。

 直接比較するのは難しい。オンラインとリアル店舗の決済、さらにそれぞれの国や地域だけでなくグローバルな決済までを総括したサービスを提供している会社は他にはないからだ。

 確かに、米Stripeや米Worldpayなどとは部分的に競合している。だが、こうした企業はある特定の分野または地域ごとにサービスを提供しており、全てを組み込んだプラットフォームを通じてサービスを提供しているわけではない。

 これに対し、Adyenは米国でもドイツでもブラジルでも、さまざまな地域で支払いのニーズに合わせた決済サービスを1つのプラットフォームで提供できる点が異なる。

「深い分析」を可能に

顧客として、MetaやUberといったグローバルに事業展開している大手企業が知られている。日本だけで事業を展開する中小企業でも、Adyenのサービスを利用するメリットは得られるのか。

 事業規模や形態を問わず、全ての企業を顧客対象と捉えている。グローバル企業の導入例が多いのは、決済に関わるさまざまな業務やデータを統一して管理したいというニーズが強いからだ。我々のプラットフォームを使えば、全ての地域のデータを一括管理し、そこから深い分析が可能になる。これが強みだと考えている。

 日本の小規模な会社でも、こうしたメリットをすぐに感じてもらえるはずだ。これらの企業が利用する決済サービスの多くは古いテクノロジーを使っており、「このような決済が生じた」という情報は得られても、どのデータがどう推移しているかなどを詳細に分析し、そこからインサイト(洞察)を得るのは難しい。我々のプラットフォームは最新のテクノロジーを活用し、深い分析を容易にしている。

データ分析によって、例えばどんな効果が期待できるのか。

 決済における承認率(authorization rate)の向上が挙げられる。取引が正当なものであるにもかかわらず「不正」と判断され、承認されないケースがある。特にSpotifyのような大企業にとっては、承認された決済が少しでも増えれば、それだけで収益に大きな差が生まれる。

 1つのプラットフォームで決済を実行し、そこから得られたデータを分析してリスク評価に生かすことで、より高い承認率を実現可能にしている。具体的な数値は公開していないが、加盟店としてはすぐ分かる効果だ。

 このほかにデータ分析を通じて、店頭やオンラインでの顧客の行動分析や、カードの承認/拒否の理由の把握、カニバリゼーション(食い合い)の状況把握などが可能になる。

グローバルで提供している機能は日本でも提供するのか。

 そのつもりだ。ただし、VisaやMastercard、ジェーシービー(JCB)といったスキームとの接続については、多少のローカライズが必要になる。ここでいうローカライズとは言語対応というよりも、各国のルールや法規制などへの対応を指す。大半の主要な接続は既に完了している。

 日本独自の決済方法もサポートする予定だ。想定しているのは「Suica」や「PayPay」などのコード決済で、加盟店のニーズに応じて対応を優先づけしていく。具体的な話も進んでいるが、提供時期はまだ明かせない。