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 現在もFinTechにおける中心的なキーワードの1つである「Embedded Finance(組み込み型金融)」。ペイルドとマネーフォワードは「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」対応の効率化や高度化を狙い、この組み込み型金融の仕組みを採用した。

 2023年10月に始まるインボイス制度では、同制度の対象となる売り手企業が所定要件を満たした「適格請求書」を発行する必要がある一方、買い手企業には請求書の保存義務が生じるなど、請求書に関わる業務が大幅に増えると想定される。ペイルドとマネーフォワードは組み込み型金融の仕組みを活用して、請求書の受け取り・管理といった経理業務と、請求書に基づく支払い処理を一気通貫で実施できるようにすることを狙う。

GMOあおぞらネット銀行の金融機能を組み込む

 クラウド型法人カード「paild」を手掛けるペイルドが2023年3月14日に提供を始めたのは、クラウドサービス「paild請求書払い」だ。GMOあおぞらネット銀行が提供する「かんたん組込型金融サービス」を活用し、専用支店口座や残高照会、振込といった銀行機能を参照系・更新系API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)などを通じて組み込んでいる。同行とペイルドは2022年4月に業務提携契約を締結している。

ペイルド代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の柳志明氏(中央)、GMOあおぞらネット銀行代表取締役会長の金子岳人氏(右)、ペイルド開発本部プロダクトマネージャーの中山勝貴氏(左)
ペイルド代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の柳志明氏(中央)、GMOあおぞらネット銀行代表取締役会長の金子岳人氏(右)、ペイルド開発本部プロダクトマネージャーの中山勝貴氏(左)
(写真:日経FinTech)
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 請求書に基づく振込に関わる業務は複雑だ。請求書の「提出(申請)」に始まり、「転記」「支払先追加」「振込入力」「振込承認」「仕訳入力」「出金明細消し込み」「書類保存」といった作業が必要で、「原本や表計算ソフトを見ながら、データを別のシステムに転記するといったケースも多い」(ペイルド開発本部プロダクトマネージャーの中山勝貴氏)。

 paild請求書払いでは組み込み型金融を利用して、提出から書類保存まで一連の業務を完結できるようにした。「一括承認も可能になり、銀行振込の体験が大きく変わる」(中山氏)。ペイルド代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の柳志明氏は、「paildの導入企業は3000社超。paild請求書払いについては今後1~2年で、paildと同程度かそれ以上のインパクトを出していきたい」と意気込む。

 GMOあおぞらネット銀行代表取締役会長の金子岳人氏はpaild請求書払いについて、「我々の金融機能を組み込むことで、銀行が提供しにくいサービスを届けられるようにすれば、法人顧客の活性化にもつながる。これこそ組み込み型金融の目指すべき姿」と語る。paild請求書払いの初期費用は無料で、月額利用料は2万円。