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 早くからテレマティクス自動車保険を手掛け、実績を積み上げてきたあいおいニッセイ同和損害保険が、保険のさらなる進化を図っている。今後、事業環境が厳しさを増していくと見込まれるなか、損害保険のあるべき姿とはどのようなものか。2022年4月1日付で同社社長に就任した新納啓介氏に話を聞いた。

(聞き手は岡部 一詩=日経FinTech編集長)

あいおいニッセイ同和損害保険 代表取締役社長 新納 啓介 氏
あいおいニッセイ同和損害保険 代表取締役社長 新納 啓介 氏
(撮影:陶山 勉)
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保険の将来像をどう見ているか。

 損害保険は、社会課題あるいは地域課題を解決する存在に進化すべきだと私は考えている。そうでなければ、これから顧客の支持を得ることは難しいのではないか。

 例えば、エシカル消費と呼ばれる動きが顕在化しつつある。同じ商品であっても、環境問題に貢献している企業のものを選択する個人が増えている。環境問題にどう向き合っていくかは、1つの価値基準として企業においても重みを増していくだろう。

 保険も変わらなければならない。保険に加入してもらうことで社会課題の解決につながる、あるいは顧客と共に課題解決に取り組める。こういった商品になる必要がある。

 新中期経営計画では、「CSV×DX」戦略をど真ん中に位置づける。CSVとは、社会との共通価値を創造していくこと。これを、デジタルによって生み出すことにチャレンジしていく。

 このコンセプトは以前から打ち出していたが、幅広い商品に適用し、価値の連鎖を生んでいくつもりだ。

テレマティクス自動車保険でさらなるチャレンジを

 社会課題の解決につながる保険というと難しく聞こえるかもしれないが、実はそうでもないと捉えている。当社はテレマティクス自動車保険を主力商品として販売してきた。2022年2月末時点で約133万件で、近く150万件を突破するだろう。

 我々はテレマティクス自動車保険において、ある挑戦をした。事故を未然に防ぐというコンセプトを掲げたのだ。加えて、事故後にも素早く保険金を支払えるようにすることで、早く立ち直ってもらう。事故の前後に、機能やサービスをセットしたものをテレマティクス自動車保険と呼んで提供してきた。

 進化型の自動車保険ということで評価していただいているが、私はさらなるチャレンジが可能だと信じている。

 テレマティクス自動車保険では安全運転のアドバイスをするので、事故の頻度を抑えられる。そうなるとパーツの交換などが不要になって、廃棄物が減る。急発進や急加速も減少するので、エコドライブにもつながる。環境に優しい状況を生み出せるわけだ。

 それだけではない。テレマティクス自動車保険に付属するアプリでは、脳トレーニングも提供している。安全運転スコアの向上を目的にしたもので、高齢ドライバーほど改善率が高いというデータが出ている。高齢者が長く安全に運転できるようになれば、交通弱者を巡る地域課題の解消にも貢献できるかもしれない。

 新しい価値基準に変わりつつあるなかで、選んでもらいやすい商品になっている。企業にとってもテレマティクス自動車保険に加入することが、環境問題などに向き合っているという対外的なメッセージになり得るはずだ。

 我々は、保険の進化に向けて実績を積み上げてきた。難しいことではないと言ったのは、そのためだ。社員には「自信を持っていこう」と話している。

 テレマティクス自動車保険の考え方やストーリーを他の商品にも適用していき、CSV×DXの価値を拡大させていく。