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 「2010年からビジネスマッチングを手掛けてきた。当初、登録は進んだものの、マッチング率は6%程度だった。それが今では20%まで拡大している」。大和証券法人コンサルティング部長の宍戸雄一氏は、このように語る。

 大和証券がビジネスマッチングで成果を上げている。従来は支店や営業店が中心だったが、追い風を受けて2022年度には本部の法人部門への展開強化に乗り出した。起爆剤になったのが、AI(人工知能)の導入だ。

実現の背景に10年分のデータ

 大和証券がビジネスマッチングにAIを導入したのは、2018年11月に遡る。同社が蓄積してきたデータを基に、大和総研が顧客企業に最適なマッチング先を導出する「ビジネスマッチングAI」を開発。営業店担当者による業務を支援する。

 ビジネスマッチングAIの機能は順次、高度化させてきた。基本となるのは、過去のマッチングパターンを基にした推薦機能だ。案件ごとにスコアを算出し、スコア上位のものを担当者にメールなどで共有する仕組みである。

 検索機能も実装し、顧客企業のニーズに応えられるマッチング先を探しやすくした。必ずしも最適な用語で検索できるわけではないため、意味が近い言葉であれば検索対象に加える連想検索モデルを採用。より顧客のニーズをくみ取りやすくしている。

 類似企業検索という機能も追加した。顧客企業に近しい企業の場合、どのようなマッチング候補が導入されるかをシミュレーションできる。顧客企業に、マッチングサービスの魅力を訴求することが主な目的だ。

 大和総研データドリブンサイエンス部チーフグレードDSアナリティクスグループリーダーを務める加藤惇雄氏は、ビジネスマッチングAIを実現できた要因として「10年近くにわたる良質なデータがあった」ことを挙げる。

 2010年からビジネスマッチングを実施するなかで、顧客企業に記載してもらった紙のヒアリングシートが大量に蓄積されていた、これを使うことで、AIモデルを構築できたというわけだ。

 ビジネスマッチングAIは、顧客企業の満足度を高める後押しになる。ただし、それだけではない。「(営業担当者の)手間がかからなくなった点は大きい」と、宍戸氏は説明する。

 実はビジネスマッチングそのものは、営業担当者の評価に直接影響はしない。顧客企業の本業を支援する上で必要な活動、という位置づけだ。にもかかわらず、これまでは営業担当者がヒアリングシートを基にマッチング先を手作業で探しており、負担が大きかったという。それが軽減されたことで、営業担当者によるビジネスマッチングへのモチベーションが高まったとみられる。