米Rippleが、国際送金以外の事業に力を入れている。トークンを手軽に発行できる機能の実装だ。テストネットでは既に稼働しており、コミュニティーで可決され次第、メインネットに移行。NFT(非代替性トークン)発行基盤として本格的な利用が始まる見通しだ。特に法人でのユースケースを取り込み、独自のポジションを築きたい考えだ。
(聞き手は岡部 一詩=日経FinTech編集長)
「Web3」が活況を呈している。どのように捉えているか。
2016年の時点で、暗号資産(仮想通貨)、ブロックチェーン、「NFT(非代替性トークン)」、「DAO(分散型自律組織)」といった存在は既に登場していた。これらを思想としてまとめたのが「Web3」。マーケティング用語という指摘もあるが、技術的なブレークスルーをまとめることでマス層に理解してもらう良い機会だと考えている。
ICO(Initial Coin Offering)が流行した当時との違いで言うと、技術そのものではなく、技術の浸透で社会がどうなるのかといった思想に重点が移っている印象だ。“What”ではなく、“How”に焦点が変化している。そのツールとして、クリプトやトークンがあるというイメージだろう。
Web3は必ずしも既得権益を排除するものではない。政府や企業も一参加者であり、これらを包含していくものだ。
Rippleと言えば、国際送金のイメージが強い。現在の状況を教えて欲しい。
2012年に稼働した「XRP Ledger」は、あらゆるものをトークン化できる分散型台帳として開発したもの。ネーティブトークンである「XRP」をブリッジにした国際送金を、これまでキラーサービスとして展開してきた。XRPをブリッジ通貨として利用することで送金コストと時間を削減するサービス「On-Demand Liquidity」が、2022年第2四半期時点で前年同期比9倍の成長を遂げるなど順調に拡大している。
典型的なユースケースは外国人労働者による本国への送金で、東南アジアや中東で利用が伸びている。それだけではない。EC(電子商取引)などで発生する少額国際送金のニーズも顕在化してきた。何十億円といった国際送金には、「SWIFT(国際銀行間金融通信協会)」を使えば良い。ただし、本国への送金やECで利用するにはコストが高く付く。暗号資産を生かしやすい領域だ。
数行のコーディングでNFTを作成できる
国際送金以外については、どのような動きがあるのか。
国際送金は我々にとって柱の1つ。昨今では、資産のトークン化にも力を注いでいる。トークン発行の新規格「XLS-20」は既にテストネットで稼働しており、コミュニティーの承認を待っている状態。可決されればメインネットに移行し、さまざまなプロジェクトや企業がNFTを発行し始めるだろう。