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暗号資産交換業大手の米Coinbaseが、ついに日本市場に参入を果たした。まずは、ビットコインやイーサリアムなどの販売所サービスを提供する。日本のFinTech企業からCoinbase日本法人の代表取締役に転じた北澤直氏は、「クリプトによって世界は良い方向に変わる」と暗号資産市場の可能性を強調する。

(聞き手=岡部 一詩)

Coinbase代表取締役 北澤直氏
Coinbase代表取締役 北澤直氏
提供:Coinbase
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3年前にCoinbase日本法人の代表に就任した。Coinbaseのどこに魅力を感じたのか。

 ミッションにほれた。Coinbaseは、「世界の経済的自由を拡大する」ことを掲げている。2018年、CEO(最高経営責任者)のBrian Armstrongに会ったとき、それを大真面目に考えていることを肌で感じた。

 彼だけではない。Coinbaseには、各業界からトップタレントが集結している。既に信用もお金も持ち合わせたメンバーが、なぜリスキーな分野に集まっているかというと、ミッションを本気で信じているからだ。

 私も、FinTechに携わるようになって発想が変わった。何年かかるかは分からないが、クリプトによって世界は良い方向に変わるはず。その最前列で少しでも貢献したい気持ちが強い。必ずしも成熟しているとは言えないクリプト業界にCoinbaseのサービスを持ち込むことで、裾野や規模の拡大につなげられれば、これほどうれしいことはない。

代表就任からサービス開始まで時間を要した。理由を教えて欲しい。

 我々のタイミングで事業を開始できたと考えている。Coinbase本来の良さを生かしつつ、日本で受け入れられるサービスの在り方を探ってきたわけだ。

 流出事件などを契機に日本における法的枠組みの再整備も進んでいた。法改正や業界団体の設置、自主規制ルールの策定など、包括的に事業できる枠組みが、この2~3年で出来上がってきた。

 当社が重視するのは最も信頼されること。サービス展開する場所において法的枠組みがあるか、事業環境が安定しているかは非常に大切だ。事業環境もサービスのクオリティーも犠牲にしたくない。両方の条件がちょうど整ったと判断した。

暗号資産市場をどう見ているか。

 1つひとつの暗号資産には、それぞれ達成したい社会的意義がある。今のビットコインは投資の側面が強いが、市場が成熟してくれば、個々の暗号資産が目指す世界を人々は評価するようになるはず。こうなると、我々のミッションが実現に近づくことになる。

 とはいえ、まだまだ黎明(れいめい)期。米国では機関投資家の引き合いが強くなってきてはいるが、日本は個人投資家がメイン。まずは、暗号資産を持っていると価格が上がったり、良いことがあったりといった初期的な関心を持ってもらう必要があるフェーズだと認識している。