全2068文字

 日本を中心に14カ国で事業を展開し、買い物客数が年間約44億人(2020年度)、連結営業収益が約8兆6000円(同)に上る巨大流通業のイオン。同社が2021年9月に提供を始めたスマートフォンアプリが「iAEON(アイイオン)」だ。

 iAEONは「イオングループ共通のタッチポイント」を目指すトータルアプリ。電子マネーの「モバイルWAON」に加えて、独自のコード決済機能「AEON Pay(イオンペイ)」を新たに搭載。同社のポイント「WAON POINT」をためる、まとめる、使うといった利用方法も可能だ。これらを活用したキャッシュレス決済によって、日々の買い物をスムーズに進められるようにすることを狙う。

イオンの「iAEON」
イオンの「iAEON」
(出所:イオン)
[画像のクリックで拡大表示]

デジタルシフトに向けた中核施策

 イオンは数年前から決済アプリを開発中とされていた。それがなぜ提供がこの時期になり、かつ「AEON Pay」アプリとせずに現在の形を採ったのか。同社は「単なる決済手段だけではなく、グループのサービスを集約したツールとして検討し、顧客により便利に利用してもらうことを目指し、今回のリリースに至った」と説明する。

 背景の1つは、イオンが2021年4月に公表した2021~2025年度の中期経営計画だ。同計画では成長戦略「2025年度までに達成する5つの変革」の筆頭に、「デジタルシフトの加速と進化」を掲げている。イオンはiAEONを「店舗とデジタルが融合されたシームレスな体験を顧客に提供することを目的とした、成長戦略の中核施策」と位置付ける。

 別の狙いとして、「グループ内に多くのアプリやデジタル関連サービスがあり、これらを集約することで、より身近に当社の店舗やサービスを利用してほしいとの思いがあった」(イオン)という。金融系サービスとしてはWAONやモバイルWAON、イオンカード、イオンデビットカードなどがあり、アプリも「イオンお買い物」「AEON WALLET」「smart WAON」など複数存在する。ポイントについてはこれまで、イオンカードやイオンデビットカードではWAON POINTとは異なる「ときめきポイント」を付与していた。

 イオングループの金融事業会社であるイオンフィナンシャルサービスの電子マネー取扱高は約2兆2500億円(2020年度)、連結カード会員数は約4600万人(同)に達する。コード決済を単体で提供するよりも、こうした既存の金融サービスをアプリで束ねると同時にコード決済を利用可能にすることで、「カードを出すことなく、クーポンやポイント、支払いまでスマホだけで完結できるようにして、買物自体を便利に変えていくサービスへと発展させていく」(イオン)。スマホを活用して購買体験をより良いものにしていくには、これらが必要だと判断し、トータルアプリの形を取ったとみられる。ポイント制度については2021年9月11日以降、WAON POINTに1本化している。