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 トヨタ自動車は2018年2月20日、希少金属(レアメタル)のテルビウム(Tb)やジスプロシウム(Dy)を一切使わず、ネオジム(Nd)の使用量も従来に比べて20~50%削減できる新型磁石を開発したと発表した(リリース)。電動車両の駆動用モーターや電動パワーステアリング(EPS)用のモーターのほか、ロボットや家電向けのモーターにも使えるという。

新型磁石を発表した先進技術開発カンパニーの庄司哲也氏
新型磁石を発表した先進技術開発カンパニーの庄司哲也氏
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左からフェライト磁石、従来のネオジム磁石(ディスプロシウム含有)、今回開発したネオジム磁石
左からフェライト磁石、従来のネオジム磁石(ディスプロシウム含有)、今回開発したネオジム磁石
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 同社は2017年12月の電動化戦略に関する会見で、2030年に世界で550万台以上の電動車両の販売を目指す方針を示した(関連記事:トヨタ、2025年ごろまでにエンジンだけの車種をゼロに)。この目標を達成するためにはモーター用に大量のネオジム磁石が必要になる。しかし、さまざまな調査会社の予測結果を見ると、最も楽観的な予測ですら、2025年にはネオジムの供給不足が指摘されているという。

2025年にネオジムの供給が不足
2025年にネオジムの供給が不足
出所:トヨタ自動車
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テルビウムやディスプロシウムを一切使わず、しかもネオジムを削減
テルビウムやディスプロシウムを一切使わず、しかもネオジムを削減
出所:トヨタ自動車
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 そこで今回はネオジムを減らす代わりに、希土類(レアアース)の中では比較的豊富で安価なランタン(La)とセリウム(Ce)を使った。ただ、ネオジムを減らした分を単純にランタンやセリウムに置き換えただけでは磁石に必要な耐熱性や磁力が大幅に低下してしまう。そこで今回は大きく三つの技術を導入し、この問題を解決した。

1)磁石を構成する結晶粒を微細化
1)磁石を構成する結晶粒を微細化
出所:トヨタ自動車
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2)結晶粒の表面に濃いネオジム層を形成
2)結晶粒の表面に濃いネオジム層を形成
出所:トヨタ自動車
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3)結晶粒にランタンとセリウムを1:3の組成比で配合
3)結晶粒にランタンとセリウムを1:3の組成比で配合
出所:トヨタ自動車
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 第1に、磁石を構成する結晶粒を微細化した。溶融させた合金を銅ロールに噴射して急冷することで、粒の直径を従来の5μmから0.25μmと1/10以下に微細化し、粒の界面の面積を従来比10倍以上に増やした。これによって高温時の各粒の磁力低下を抑制し、保磁力を高めた。これは同社が2010年に出願した特許技術とする。

 第2に、結晶粒の表面に濃いネオジム層を作った。具体的には結晶を微細化したリボン状の合金を加圧焼成した後、低温で溶融させたネオジムを粒の界面に染み込ませた。これによってネオジムの量を減らしながら、高い磁力を実現した。これは同社が2013年に出願した特許技術とする。

 第3に、結晶粒にランタンとセリウムを1:3の組成比で配合した。特定の組成比にすることで、ネオジムの代わりにランタンやセリウムを使っても、耐熱性や磁力の低下を抑制できたという。これは2017年に出願した特許技術とする。