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 赤い自転車に乗ったビジネスマンが都心のビル群を走り抜ける。こんな光景が東京では当たり前になってきた。特定の自転車を所有せず、利用時間に応じた料金を支払うシェアリング(共有)の仕組みが広がっている。業界を先導するのはNTTドコモが母体のドコモ・バイクシェア。2011年に初めて大規模事業化を成し遂げた。先駆車として追いかける競合他社をどう退けるのか。事業の展望を代表取締役社長の堀清敬氏に聞く。

(聞き手は窪野 薫=日経 xTECH)

ドコモ・バイクシェア代表取締役社長の堀清敬氏
ドコモ・バイクシェア代表取締役社長の堀清敬氏
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2011年4月の事業開始から7年が経つ。ドコモの自転車シェアは広がったか。

 おかげさまで利用者数は年々右肩上がり、会員数は31万人を超えた。2017年度(2017年4月~2018年3月)の利用回数は470~500万回を見込む。これは前年度の2倍以上、事業開始年度の120倍に相当する。東京の区部を中心に、仙台市や横浜市、那覇市などの地方都市にも広がりつつある。

 地方の観光協会や自治体向けに“仕組み”の提供も進めている。自転車シェアにおける車両の位置把握や決済のシステムを提供したり、車両のリースも行っている。利用者を大きく増やす手段の一つとして、今後とも力を入れていく。

ドコモ・バイクシェアの車両、電動アシスト付きで、鍵部分にGPS(全地球測位システム)や決済システムを搭載
ドコモ・バイクシェアの車両、電動アシスト付きで、鍵部分にGPS(全地球測位システム)や決済システムを搭載
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競合他社(LINEやメルカリなど)が続々と参入を表明している。

 他社の参入は冷静に見ている。自転車シェアの認知度の向上につながると考え、前向きに捉えている。子供のころは自転車を乗り回していたが大人になってめっきり乗らなくなってしまった——。そんな方々に再び自転車に触れるきっかけを提供し、需要を掘り起こしたい(関連記事:自転車シェア、勝者は何色? ドコモ、SB、LINEなど「競走」)。

 自転車シェア事業の競争軸はどれだけ多くの駐輪拠点(ポート)を確保できるかだ。使い勝手に直結する。ドコモ・バイクシェアのポート数は全国で645カ所。車両台数は6713台を確保している。東京ではコンビニエンスストアとの提携を進めている。店舗にシェア利用者を呼び込む手段となり「WIN-WIN」の関係性を築ける。今後はポート数と車両台数をさらに増やす。大きな契機になるのが2020年の東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪)だ。日本人のみならず、自転車シェアに慣れ親しんだ外国人が東京に押し寄せる。手薄なエリアにポートを増やして使いやすくする。

実際のところ、自転車シェアは儲かるのか。

 正直に話すと、自転車シェアの利用料金だけでは大きな利益は生まれない。スポンサー収入や補助金などに支えられることが、米ニューヨーク市や英ロンドン市など世界の都市の事例を見ても多い。我々ドコモ・バイクシェアが目指すのは、利用料金だけで事業を永続可能にすることだ。(2020年の東京五輪をきっかけに)利用者が今の数倍まで拡大すれば、利用料金だけで事業が成り立ちそうである。今必要なのはとにかく事業規模を拡大することだ。

 (利用者の属性データや行動データなど)蓄積した情報の活用も検討している。親会社が通信インフラを担うNTTドコモのため、利便性を高める情報を配信したり、マーケティングに活用したりと、データを生かしやすい環境にある。しかし、データの活用はあくまでシェア事業の「プラスアルファ」にとどめたい。大きく利益を上げられなくてもよい。本業だけで採算が取れるように事業体制を強化する。