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 「電動パワーステアリング(EPS)を自動運転車の“小脳”のような存在にしたい」――。ジェイテクト常務執行役員ステアリング事業本部副本部長技術開発部門担当の松岡浩史氏は、自動運転時代のEPSの役割がますます高まると述べた。

ジェイテクト常務執行役員ステアリング事業本部副本部長技術開発部門担当の松岡浩史氏
ジェイテクト常務執行役員ステアリング事業本部副本部長技術開発部門担当の松岡浩史氏
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 同社はEPSの世界シェアが2016年に約27%と業界首位である。松岡氏は、1988年に同社が世界で初めて生産したコラム型EPS「C-EPS」の電気系の技術開発を担当し、EPSの黎明期から開発に携わってきた。今後の自動運転時代に対し、「EPSの付加価値を高めることができなければ、首位の座を守れない」(同氏)と危機感をにじませる。自動運転システムの指示に従うだけのEPSではコモディティー化が避けられないからだ。

 EPSの付加価値を高める試みの一つが、EPSを“小脳”として活用するアイデアである。自動運転車はカメラなどのセンサーで捉えた情報を車載コンピューターで処理し、ステアリングなどを制御するが、1回の制御ループに必要な時間は0.2~1秒と長い。「これは人間でいえば“大脳”に相当する部分」(同氏)とする。一方、EPSの制御ループは約1msと短く、反射的な素早い制御ができる。人間でいえば“小脳”に相当する。“大脳”だけでは大まかな制御しかできず、すでに実用化されている車線維持機能なども「改善の余地が大きい」(同氏)とする。ここに“小脳”を組み合わせることで、より緻密な制御を実現する。

 例えば、人間の運転者は路面の状況(凹凸や滑りやすさなど)によってステアリングが予期せぬ動きをした際に、反射的に操作を補正して走行を安定化させている。EPSではこうした素早い制御が可能になる。路面の状況は、EPSの駆動モーターの電流値などから把握できる。路面が滑りやすければ、EPSの負荷は減り、モーターに流れる電流も減る。こうした情報を基にEPSの舵角を補正する制御アルゴリズムを開発したところ、「走行軌跡の誤差を従来の約30cmから約10cmに低減できた」(同氏)。

舵角補正の仕組み
舵角補正の仕組み
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 走行軌跡の誤差を減らすことは、自動運転車の乗り心地の改善にもつながる。「乗り心地の改善は、人間の感性に関わるため定量化が難しい。ここは我々が長年培ってきたEPSの経験を活かせる余地が大きい」(同氏)とする。

 EPSの舵角補正技術はすでに研究開発レベルでは機能検証できており、顧客に提案している段階である。ただ、量産車に適用するためには、さまざまな路面状況への対応や、他のシステムとの競合への対策、安全性の確認などが必要になるため、「2020年の試験的な技術導入を目指す」(同氏)と述べた。