PR

 奈良県に地盤を置く地域生活協同組合(生協)のならコープが会計・人事給与システムを刷新、2018年4月から順次稼働させる。人工知能(AI)を活用し、業務効率化や品質向上を図るのが特徴だ。担当者のノウハウを学習させた結果を使って仕訳などの入力業務を削減したり、修正が必要な箇所をその方法とともに提示したりできるようにする。会計で年間3000時間、人事給与で同1000時間の作業時間短縮を見込む。

ならコープの店舗(コープなんごう)
ならコープの店舗(コープなんごう)
画像提供:ならコープ
[画像のクリックで拡大表示]

 ならコープは全国に560近くある地域生協(医療福祉生協や大学生協を含む、2017年9月時点)の中で「規模は14、15番目くらい」と仁禮(にれい)雅子 執行役員業務支援本部統括は話す。企業の売上高に相当する供給高は約386億円(2017年3月期)と中堅企業並みだ。

 約1300年前、奈良県では平城京への遷都が実施された。都を移す遷都は現在では首都機能の一部を移すという意味でも使われる。ならコープの取り組みは本部機能の一部をAIに移す「AI遷都」とも言える。同様の課題を抱える中堅企業にも参考になりそうだ。

ベテランのノウハウをシステムに取り込む

 なぜ、ならコープはいち早くAI導入に踏み切ったのか。大きな理由は担当者の高齢化対策だ。

経理財務部の鈴木正志部長
経理財務部の鈴木正志部長
[画像のクリックで拡大表示]

 「2人の担当者がいないと業務が回らない」。ならコープの会計部門である経理財務部の現状を、鈴木正志 経理財務部部長はこう説明する。2人は経理や決算、税務といった会計に関わる業務を25年以上担当している。共通部門をスリム化した結果、ノウハウを持つ2人が残った形だ。

 会計システムを使っているものの、ノウハウは全て担当者2人が持つ。マニュアルは存在せず、「ドキュメントにまとめようにも、日々の業務に忙殺されて時間が取りにくい」(鈴木氏)状況だという。

 問題は担当者の高齢化だ。共に50代で、うち1人は定年が近づきつつある。早急に対策を打つ必要があるが共通部門の増員は難しく、別の担当者に引き継ぐのは難しい。「ベテランのノウハウをシステムに盛り込むしかない」と鈴木氏は考えた。