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 出来合いですぐに使える、学習済みAI(人工知能)のクラウドサービス。このサービスを提供する米IBM、米マイクロソフト、米グーグルなどが相次いで追加学習の機能を付加。ユーザー企業が、独自のデータによって追加学習させ、自社のビジネスに合わせたAIを開発する動きが広がっている。

 オートバックスセブンは、米IBMの画像認識AIのクラウドサービス「Visual Recognition」を活用。この学習済みAIサービスをベースに、様々な摩耗状態のタイヤ画像によって追加学習させ、タイヤの摩耗状態が分かるAIを2カ月で開発。クラウドで動作するこのAIを呼び出して利用するスマートフォンアプリ「かんたんタイヤ画像診断」を2017年9月から提供している。

タイヤの摩耗状態を手軽に確認できる「かんたんタイヤ画像診断」
タイヤの摩耗状態を手軽に確認できる「かんたんタイヤ画像診断」
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 アプリのユーザーが自分の車のタイヤを撮影すると、画像がIBMのクラウドに送られ、追加学習したAIが摩耗レベルを大・中・小の3段階で評価する。

 オートバックスセブンの佐々木勝常務執行役員商品統括は、日本IBMとソフトバンクが2017年10月に共同開催したイベント「AI Business Forum」で、AI開発の狙いについてこう語った。

 「当社の店舗は全国に600超あり、会員数は860万人いる。しかし、日ごろから店舗に足を運ぶのは約1割。日常的なタイヤ点検を通じて残り9割の会員との接点を作りたい」。

追加学習AIはいいところ取りのサービス

 追加学習できるAIサービスが登場する前から、クラウドでは大きく二つのAIサービスが提供されてきた。

 一つは、AIのソフト部品や実行環境を提供するタイプ。学習していないまっさらのAIが提供されるので、ユーザー企業が膨大な学習用データを用意する必要がある。さらに、ソフト部品の選択やAIのチューニングなどで開発スキルも必要になり、ハードルが高い。

 もう一つのタイプは、学習済みのAIだ。クラウド事業者が膨大な学習用データによって開発したAIであり、画像に映っているモノの認識、同一人物判定、性別や年齢の判定、自然言語の意図解釈、機械翻訳などの単機能に分かれている。

 学習済みAIは出来合いですぐに利用できるが、基本的には機能ごとに汎用に作られており、特定分野について高い精度を求めるのは難しい。例えば画像に映っているモノの認識では、タイヤが映っていると認識できるが、タイヤのすり減りレベルまでは判定できない。