多くの電子機器では、他の電子機器の動作に悪影響を及ぼす雑音(EMI:Electromagnetic Interference)の放射を一定レベル以下に抑えるように法律で決められている。一定レベル以下の雑音しか放射していないと認定してもらうのが、EMIコンプライアンス試験である。電子機器メーカーとは独立した認可機関が行っている。
EMIコンプライアンス試験は、定められた設備や条件で行われる。EMIコンプライアンス試験に使う設備や条件は、電子機器の開発現場で普段使うものとは必ずしも一致しないためか、米国の計測器メーカーのTektronix社によれば、最初のEMIコンプライアンス試験をパスできないケースは約50%に上るという。EMIコンプライアンス試験に通らないと市場に機器を出荷できないため、通るまでの経費や時間がかかる。
このEMIコンプライアンス試験の経費や時間の削減を狙って、Tektronixはソリューション(ハードウエアとソフトウエアのセット)「EMCVu」の提供を2018年1月末から始めた(日本語ニュースリリース)。今回、日本法人のテクトロニクスにEMCVuが届き、報道機関に披露した。テクトロニクスによれば、Tektronixは、雑音測定の要と言える計測器として、スペクトラムアナライザーを長年提供してきた。
Tektronixの顧客は、同社のスペクトラムアナライザーと、アンテナなどのコンプライアンス試験で使われるような各種周辺部品(以下、アクセサリー)を組み合わせて、疑似的なコンプライアンス試験(以下、プリコンプライアンス測定)を自ら行うことがあるという。プリコンプライアンス測定を行うことで、第3者機関が行うコンプライアンス試験の合格率を上げるためだ。
ただし、同社によれば、プリコンプライアンス測定のハードルは意外に高いという。普段は使わないような試験向けのアクセサリーを集めたり、それをスペクトラムアナライザーに接続する際にはさまざまな設定が必要になるからだ。こうしたプリコンプライアンス測定のハードルを下げることが、今回のソリューションのEMCVuで可能になるという。適切なプリコンプライアンス測定を顧客が自ら行うことで、第3者機関が行うコンプライアンス試験を受ける回数を削減できると同社は説明する。