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 日産自動車副社長の坂本秀行氏は、電気自動車(EV)のリチウムイオン電池を再利用する技術で、低迷するEVの中古価格を高める狙いを明かした。EV「リーフ」の実質的な新車価格の向上につながる。再利用が環境面への貢献にとどまらず、直近の利益に結びつく可能性に期待した。

 日産と住友商事の合弁会社であるフォーアールエナジーは2018年3月26日、EVの使用済み電池を回収し、状態の良いものを再びEV向けに販売すると発表した。価格は、電池容量24kWhで税抜き30万円と安い。新品は65万円で、半額以下だ。販売は同年5月から。なお、取り換え費用が別途4万円程度かかる。

リーフの電池を回収
リーフの電池を回収

 併せて、電池を回収して再利用する工場を福島県浪江町に設立した。初代リーフの発売から7年以上が経ち、回収量が増えていくと判断した。

日産自動車副社長の坂本秀行氏
日産自動車副社長の坂本秀行氏

 フォーアールの事業で日産に貢献するのは一見、中古電池の販売事業に思える。ところが坂本氏は日経 xTECH/日経Automotiveらの取材に対し、「中古車の再販価値を上げられることが、(日産の事業面で)一番大きい。電池を再生し、保証した上で再販売できる」との考えを示した。

 「中古電池工場」は、電池を安く買い換えられる仕組みというわけだ。EVの中古価格が安くなる原因が、電池の経年劣化に伴い航続距離が減ること。安い中古電池を買える選択肢ができれば、消費者の懸念を払拭しやすくなると期待する。中古電池の航続距離は、新品の9割近くに達するようだ。

 一方でフォーアールの中古電池の販売事業は、回収できるEVの台数に依存する。2018年度は数百台分にとどまる見込みだ。2020年頃に1万台規模に増える見込みだが、当面は大きな収益を期待しにくい。