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 トヨタにとっては、スズキにカローラを供給することで工場の稼働率を上げられる点も魅力に映った。TKMはカルナタカ州バンガロール市の郊外に、年間31万台の生産能力を備える工場を持つ。だが、現在の生産規模は「16万台程度」(立花氏)にとどまっている。

 一方のスズキは、インド市場では47.4%(2016年度)ものシェアを持つ最大手だ。販売車種は「Wagon R」や「スイフト」といった低価格な小型車が中心で、上級車種が不足していた。同市場2位の韓国・現代自動車(Hyundai Motor)をはじめとする競合他社は上級車をこぞって用意し、ブランド価値の向上を図っている。スズキは、顧客流出を抑える一つの策として、ラインアップに中型セダンのカローラを加えることにした。

欠けていたフルHEVのピース

 インド政府が強力に推進する環境車の普及戦略に対応する上でも、スズキにとってはトヨタのHEVが必要だった。スズキはインド市場ではマイルドHEVを展開しているが、鉛蓄電池を使っており、「最新技術の現地生産を目指す政府からの印象は良くない」(インド在住の自動車メーカー関係者)。

 リチウムイオン電池を使ったマイルドHEVは2020~2021年ごろに発売する見込みだが、いわゆる「フルHEV」の投入計画は不透明だった(関連記事:スズキがインドで使うマイルドHEV用電池、体積55%減)。業界首位が政府の意向に沿わないわけにはいかない。

図2 2016年10月にトヨタの豊田章男社長(左)とスズキの鈴木修会長(右)が揃って記者会見した
図2 2016年10月にトヨタの豊田章男社長(左)とスズキの鈴木修会長(右)が揃って記者会見した
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 両社は2016年11月に業務提携に向けた検討を開始し、2017年2月に覚書を締結して協業内容を検討してきた(図2)。今回の相互OEMの他に、2020年ごろにインド市場に電気自動車(EV)を投入する計画を進めている(関連記事:トヨタとスズキが協力、2020年にインドでEV投入)。成長市場のインドを“日本連合”で攻略する戦略が具体化してきた。