PR

「回避可能」が専門家の見解

 専門家が事故を回避もしくは衝突のインパクトを軽減できたと判断する、代表的な理由は次の2つだ。

[1]カメラ画像は通常、明るさと暗さのバランスなどを人間の視覚と全く同じようには再現できない。その上、人間の目は暗闇に慣れるという特性もあり、今回の現場では記録されているカメラ画像から識別されるよりも以前から女性を把握できた可能性が高い(注:そもそも、人間のドライバーであれば1、2秒以内でも何らかの回避行動を行うはずだ。実際の現場ではより早い段階で緊急ブレーキなどの回避行動を開始し、速度が低下すればぶつかるまでの時間も長くなって、女性側もある程度対応できた可能性も指摘されている)。

[2]加えて、このクルマにはLiDAR(レーザ光線により、空間にある物体の存在の方向と距離を認識する装置)とレーダーなどのセンサーが装着されており、これらによって周囲の明るさとは関係なく障害物などを認識し、衝突回避に必要な処理が可能なはずである。今回はそうした装置が機能していなかったか、センシングしたデータに対する画像処理やその後のシステム制御との連携がうまく機能していなかった可能性がある。

 今回の自動運転車が人間の視覚よりも低い認識技術や判断・操作技術に依存し、それをバックアップドライバーが埋め合わせる前提で公道試験を実施していた──。仮にそうだとすれば、ドライバーの注意散漫(注:公開された映像では、事故当時バックアップドライバーは走行状況を十分監視していたとは言えない)はUberの公道テストの運用体制に内在する問題を浮き彫りにしたことになる。

 同月26日(現地時間)、アリゾナ州はUberが公道テストを行う権利を停止している。