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 全ての上場企業は売り上げに関する会計処理を一度、見直す必要がある。特に工事進行基準が廃止になることから、受託ソフトウエア開発を実施しているITベンダーへの影響は大きい。

 日本の会計基準を作成する企業会計基準委員会(ASBJ)は2018年3月30日、企業の売上高に関する会計処理を定める「収益認識基準に関する会計基準(以下、収益認識基準)」を公表した。収益認識基準の適用対象となるのは全上場企業約3600社だ。2021年4月1日以降に開始する事業年度から強制適用になるが、2018年4月1日以降に開始する事業年度から早期適用もできる。

 新たに売り上げの計上処理について定めた基準ができたことから、全ての上場企業は自社の売り上げ処理方法について、収益認識基準が定めた内容にのっとっているかどうかの見直し作業が必要になる。

 その中で、「影響が大きい業種の1つ」(ASBJの小賀坂敦副委員長)と見られるのが、これまで「工事契約に関する会計基準(以下、工事進行基準)」の適用対象となっていた受託ソフトウエア開発だ。

 工事進行基準は、その名の通りビルなどの建設工事やソフトウエア開発など工期の長いプロジェクト型の事業について会計処理を定めていた。これが収益認識基準の登場によって廃止になるためだ。「工事進行基準という言葉自体がなくなる」とASBJの小賀坂副委員長は話す。

工事進行基準と適用条件が異なる

 受託ソフトウエア開発は、ITベンダーが実施している顧客からの発注に基づいてシステム構築を実施するプロジェクトを指す。

 工事進行基準は2009年4月から適用され、受託ソフトウエア開発プロジェクトのうち、「工事収益総額、工事原価総額、決算日における進捗度を、信頼性をもって見積もれる」場合に、「工事進行基準を採用する」と定めている。プロジェクト開始時に、契約金額と原価が決まっており、プロジェクト中にきちんと進捗度が見積もれると判断できる場合に、顧客から支払いを受けていなくても四半期ごとに進捗に相当する売上高を計上するというものだ。

 これに対し、収益認識基準では受託ソフトウエア開発や建設工事に限らず、「一定期間にわたって企業が製品やサービスを販売する取引では、顧客企業に製品やサービスが移転するごとに、収益を認識する」と定められている。受託ソフトウエア開発でこの通りに売上高を処理した場合、「工事進行基準と大きな差異がないと考えられる」(ASBJの小賀坂副委員長)。そのため実際には、収益認識基準にのっとって一度見直しを実施する必要はあるものの、現在の実務と大きく変わらないケースが多いとみられる。

 工事進行基準と収益認識基準で異なるのは、進捗に応じて収益を計上するための条件だ。工事進行基準では、「工事収益総額、工事原価総額、決算日における進捗度を、信頼性をもって見積もれる場合」としているのに対し、収益認識基準では「一定の期間、製品やサービスが顧客企業に移転しているかどうか」を判断する条件が別途、定められている。

検収時に一括計上の可能性も

 「企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること」などの条件があるが、そのうち「判断が難しくなる可能性が高い」(ASBJの小賀坂副委員長)のが、「企業が顧客との契約における履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること」の項目だ。