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 携帯電話大手3社は2018年3月末、2017年度に適用する接続料を公表した。接続料とは、通信設備の接続で支払う料金のこと。格安スマホに代表されるMVNO(仮想移動体通信事業者)はサービスの提供に当たって携帯電話事業者に接続料を支払っており、収入の多くをこの負担に充てている。接続料の水準は経営を大きく左右するだけに、多くのMVNOが今回の改定に注目していた。

 接続料のうち、MVNOの負担が最も大きいのはパケット接続料だ。携帯電話事業者と接続する回線の容量(帯域幅)に応じて料金が決まり、改定後の単価は既報の通り。大手を中心に多くのMVNOが採用する「レイヤー2接続」(10Mビット/秒当たり)を例に挙げると、NTTドコモが前年度比18%減の月55万2075円、KDDI(au)が同11%減の月76万5638円、ソフトバンクが同18%減の月77万3519円だった。

携帯電話大手3社のパケット接続料(レイヤー2接続、10Mビット/秒当たりの月額)の推移。2015年度適用分は2016年8月の改定値を記載した
携帯電話大手3社のパケット接続料(レイヤー2接続、10Mビット/秒当たりの月額)の推移。2015年度適用分は2016年8月の改定値を記載した
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 パケット接続料が11~18%低減したとはいえ、ユーザーの平均トラフィック(通信量)はそれ以上に伸びており、恩恵は限られる。それどころか、KDDIとソフトバンクは今回の改定で回線管理機能の利用料金を値上げしており、両社の回線を利用するMVNOにとっては手痛い結果となった。

月6~7円の値上げでもMVNOには痛手

 KDDIとソフトバンクが値上げした回線管理機能は設備に関する情報の管理や端末の認証などを担う機能であり、MVNOは契約数に応じた費用を負担している。改定後の利用料金はNTTドコモが月94円(改定前は月97円)、KDDIが月88円(同82円)、ソフトバンクが月88円(同81円)。月6~7円の値上げではあるが、年換算で72~84円。10万件の契約数では720万~840万円の負担増となり、薄利多売のビジネスを展開するMVNOには重い。

大手3社の回線管理機能の利用料金(契約者回線ごと)
事業者名改定前改定後
NTTドコモ月97円月94円
KDDI(au)月82円月88円
ソフトバンク月81円月88円

 回線管理機能の利用料金を巡っては、以前から「算定方法が不明で公平妥当性に疑問」とする不満の声がMVNOから出ていた。そこで、総務省は2017年9月に電気通信事業法施行規則などの一部を改正し、算定根拠を厳しくチェックするようにしたわけだが、その直後の値上げだけに多くのMVNOが驚いた。総務省は「届け出を受けたばかりで検証はこれからになる」としており、今後の対応が注目される。

 もっとも、回線管理機能の利用料金を大手3社で比べると、今回値下げしたNTTドコモが最も高い。これまで「安すぎ」だったKDDIとソフトバンクの利用料金が適正化されただけの可能性も高く、一概に判断できない状況だ。