灰で「窒息」してしまう
ただし、実用化までの道のりは前途多難だ。特に大きな課題が2つある。1つは、Liの灰(Li2O2)が正極中に堆積して目詰まりし、酸素がうまく取り入れられなくなる点である。この現象は「窒息」とも呼ばれ、Li空気電池の重量エネルギー密度を理論値に近づける上での大きなネックになっている。これまでNIMSが試作したLi空気電池では、600Wh/kgが最高値という。
もう1つの大きな課題は、充放電サイクル寿命が非常に短いことだ。現状では、充電時にLiの灰を還元するために大きな電圧(過電圧)をかける必要があり、その結果、さまざまな副反応が起こって、本来のLiに戻らなくなることが、サイクル寿命が短い原因となっている。今はどのような副反応が起こっているか詳細に調べている最中で、開発はまだまだ基礎段階にあるというのが現状だ。
「失敗したらごめんなさい」
ソフトバンクの宮川氏は、難しさは承知しており、「もし開発に失敗したらごめんなさい、というほかない」という。一方で、「IoTにとって電池問題は避けて通れないが、これまでの開発ペースだと、実用化は(2030年以降で)我々の代ではできない。もし、これまでの開発ペースで5年かければ解決できることであれば、今回の取り組みで本気で加速して、実用化できる確率を高めたい。最終的には、5~10年先には実用化したい。険しい山だが、頂上までいけば見える景色が変わるはず」(同氏)とした。