「お父さんだけ仕事で家族旅行に行けなくても、あるいはケガをして移動できなくても、東京にいながら沖縄県の美ら海水族館を観賞したり大分の関アジを釣ったりできる。そうした夢をかなえるのがANA AVATARだ」――。ANAホールディングス(ANAHD)は2018年3月29日、「ANA AVATAR」事業を2019年4月に始めると発表。片野坂真哉社長は発表会で冒頭のように高らかに宣言した。
ANAHDがAVATAR事業として展開をもくろむのは、遠隔操作ロボットを活用するBtoC、BtoB双方のサービスだ。3月29日の発表会で同社が積極的にアピールしたのはBtoCのサービスだ。
例えば冒頭の美ら海水族館ならば、水族館にある自走式のテレビ会議装置「Beam Pro」を東京から遠隔操作。ANAHDが東京などに設けた拠点で、複数枚の液晶ディスプレイを並べた大画面で館内を鑑賞できるというサービスを計画している。
釣り体験では、拠点内に設置した釣り竿を操作すると観光地の釣り竿が連動して動く仕組みで、魚がヒットしたときの感触も操作する人にフィードバックされるという。遠隔操作で釣り上げた魚を宅配便で自宅に届けるといったサービスも計画中だ。触覚が伝わるグローブを使い、雪の冷たさを体感することも可能だとする。
ANAHDは、こうした観光体験ができるサービスを消費者向けに時間貸しすることを検討中。「例えば釣った魚をその場ですぐ食べるといった体験は現地ならではのものだし、一度遠隔で観光体験をすれば次の旅行先を検討するときにその観光地が想起されるだろう。遠隔での体験が本業の航空輸送にもつながると考えている」(ANAHD デジタル・デザイン・ラボの深堀昴アバター・プログラム・ディレクター)。