「前例が無い」。2018年4月1日付でGEジャパン元社長の熊谷昭彦氏がNECの執行役員副社長に就任した人事について、NECの古参社員はこう話す。省庁出身者や顧客企業の役員を招く例はあったが、民間企業の経営者を副社長に登用するのは異例だ。外部人材の登用というカンフル剤で、長年果たせなかった「成長軌道への回帰」を実現できるか。
NECは2018年1月、2020年度を最終年度とする新しい中期経営計画を発表した。新野隆社長には2017年春、自らが社長就任前に経営企画担当役員として策定を主導した「2018中期経営計画」を撤回した苦い経験がある。再度の計画撤回は許されない。国内3000人の削減を含む計画のなかで成長の原動力として海外事業を位置付けた。横ばいが続いていた海外売上高を3年間で2割以上増やして8900億円にするという目標だ。
オオカミ少年だった「海外で成長」
NECが海外での成長を宣言したのはこれが初めてではない。国内での大幅成長が難しくなるなか、これまで何度も海外売上高拡大の目標を掲げては未達に終わってきた。2010年に定めた中期経営計画「V2012」では海外売上高1兆円を目指したが、想定していた大型M&A(合併・買収)を実現できず、最終年度に目標の半分以下となる4831億円で終わった。
2013年に定めた「2015中期経営計画」では、アジアへの注力や現地主導型ビジネスの推進を掲げて7500億円を目指したが、再び未達だった。最終年度の海外売上高は2割未達の6032億円だった。そして撤回した2018中期経営計画では映像監視や出入国管理など「セーフティ」事業や通信事業者向けネットワーク事業をテコに海外売上高8000億円という目標を掲げたが、2017年度(1月時点の予想)は1割未達の7300億円にとどまる。
「成長を必ず実現する」。中計発表の場でこう意気込んだ新野社長は、セーフティ分野の世界トップ企業を目指す方針を打ち出した。713億円を投じて買収した英ノースゲート・パブリック・サービシズの警察や自治体向けソフトウエアや顧客基盤も活用しながら、2017年度に売上高が約500億円の海外セーフティ事業を2020年度に2000億円まで増やす計画だ。