カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)傘下のCCCマーケティングは2018年4月21日、共通ポイント「Tポイント」のカード会員約6500万人分の購買データなどを基に新たな事業企画を競うコンテスト「DATA DEMOCRACY DAYS」の審査会を開催した。企業が集めた個人データをコンテスト形式で一般の参加者に委託して広く活用方法を募るのは国内初の試みとみられ、個人データの活用を探る手法として今後広がるかが注目されそうだ。
セキュリティ高い閉鎖空間で個人データを分析
同社がコンテスト参加者に委託したのは、Tポイントのサービス開始から15年間に集めたTポイントカード会員(以下T会員)約6500万人分の購買データ(ID-POSデータ) と、Tポイントの付与・還元といったデータなどだ。ただし、データに氏名や電話番号は含まず、Tポイントの会員番号は復元できないように暗号化した。いわば仮名の個人データだ。
コンテストの最大の特徴は、参加者に守秘義務などを課したうえで個人データに触れてもらって事業を立案してもらう「委託モデル」と呼ぶ手法を採用した点だ。同社の増田慶太執行役員企画本部本部長は「個人データそのものにアクセスしてもらえるように検討した結果だ」と話す。
同社は2018年3月から指定した5日間の午後の時間帯に限って社内の会議スペースを閉鎖空間として提供。コンテスト参加者には閉鎖空間で個人データを扱えるようにして、スマートフォンや記録媒体などの持ち込みや個人データの持ち出し、個人を特定する行為などを禁止した。
閉鎖空間にはチームごとに2台のPCを用意。1つは「Excel」や「SQL Server」、「Python」、統計分析ソフトの「R」などをあらかじめインストールしてT会員のデータを分析できるようにしつつインターネットにつながないPCと、インターネット検索などができるようにしたPCを分けて提供し、T会員のデータと外部データとを結びつけられないようにした。誰がどんな操作をしているかチェックも徹底したという。
コンテストには305人が応募し、書類審査などを通過した19チームの46人が参加した。参加者は閉鎖空間への入り口で契約書にサインしてセキュリティチェックを受けたうえで事業企画の立案に挑んだ。なかには閉鎖空間の外で思いついたアイデアを紙に印刷して持ち込み、PCに打ち直してデータを分析したチームもあった。
コンテストの狙いについて、同社の北村和彦社長は「自社の利益のためだけに個人データを活用するのではなく、個人情報の提供者が受益者となるように直接リターンを返したいからだ」と明かす。プライバシーを保護しながら広く個人データを活用して社会に役立てる必要があると判断したという。