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 三菱電機は、関係会社の多田電機(本社兵庫県尼崎市)と共同で、火花(スパッタ)が出ないファイバーレーザー溶接の新技術を開発した。集光したレーザー光の出力密度分布の工夫により、従来に比べて火花の量を95%以上削減可能という。溶接品質や溶接速度の向上が期待できるとしている。三菱電機が技術開発し、2019年に多田電機が製品化する予定だ。

図1 火花の出方の違い
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図1 火花の出方の違い
今回開発した技術(右)を用いるとほとんど火花が出ない。

 今回開発した技術では、単位面積当たりの出力密度が高い「強いレーザー」光の周囲に、それよりも1桁ほど出力密度が低い「弱いレーザー光」を照射する。つまり、出力は従来と同じでもレーザービームの中央部の出力密度が特に高く、ビーム径も大きいビームとなる。中央の出力密度は、同出力の従来のビームのそれに比べて3~4倍程度という。レーザー光を集光する加工ヘッド内の集光光学系を独自開発し、強いレーザー光と弱いレーザー光を同時に発生させられるようにした。

図2 出力密度分布の違い
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図2 出力密度分布の違い
新技術は、ビーム中央の出力密度が非常に高い。

なぜ火花がでないのか

 一般にファイバーレーザー溶接では、ワークの照射部の金属が溶けて深い溶け込み孔(キーホール)ができるとともに、その周囲に溶融金属溜まりが形成され、それが再凝固することで溶接する。このとき、キーホールの溶接進行方向後方の溶融金属溜まりに、キーホールに沿った上向きの溶融金属の流れが生じる。レーザーの出力や溶接速度を上げると、この上昇流が大きくなって溶融金属が火花となって飛散するというわけだ。

 今回開発した新技術では、キーホールの上面開口部周辺に弱いレーザー光を照射することで、上面開口部が押し広げられたようになる。これによって溶融金属の上昇流が弱くなり飛散が抑制されるという。「さまざまな溶接条件で1万回以上の溶接を繰り返し、溶融状況を高速度カメラで観察してこの技術にたどり着いた」(三菱電機駆動制御システム技術部次長の藤川周一氏)。実は、炭酸ガスレーザーで火花が出ないのは、溶接時に生じたプラズマガスがレーザー光の一部を吸収して高温となり、今回開発した技術と同様にキーホールの上面開口部周辺の金属を溶かしているためという。

図3 火花抑制のメカニズム
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図3 火花抑制のメカニズム
通常、キーホールの溶接進行方向後方の溶融金属に上昇流が生じ、それが飛散して火花となる。新技術は、弱いレーザー光によってキーホールの上面開口部がラッパ状となる。これにより溶融金属が飛散しにくくなるという。