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 スマートフォン向けSoC(System on a Chip)で、米Qualcomm社の牙城を崩した台湾MediaTek社。今年に入ってASIC(Application Specific Integrated Circuit)事業(セミカスタムIC事業)をアピールすることが増えてきた。同事業への思いを同社のJC Hsu氏(Corporate Vice President, Integrated Device Business Group co-BG Head)に聞いた。

JC Hsu氏。日経 xTECHが撮影
JC Hsu氏。日経 xTECHが撮影
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:日本の半導体メーカーをはじめ世界中の多くの半導体メーカーが一般にASICと呼ばれるセミカスタムICの事業は儲からないと判断して、撤退したり、積極展開をやめたりして久しい。そのASIC事業に、なぜ今、MediaTekは本腰を入れるのか。

Hsu氏 エレクトロニクス業界全体に大きな変化が起こり、今後、再び、ASIC事業が大きく伸びるからだ。順を追って話す。かつてエレクトロニクス業界のイノベーションはシステムメーカーが起こしていた。イノベーションを実装する手段として、汎用的なICではなくASICが有力となり、半導体メーカーのASIC事業は成長した。しかし、システムメーカーが成熟しイノベーションを起こせなくなると、コストや調達期間で優位なASSP(Application Specific Standard Product)が喜ばれるため、多くの半導体メーカーがASIC事業ではなくASSP事業に力を入れるようになった。

 少し前からエレクトロニクス業界に新たなイノベーションを起こす企業の勢いが強くなってきた。すなわち、(筆者注:米Amazon.com社や米Facebook社、米Google社などの)クラウドサービスを提供する企業がイノベーションを生み出すと共に、事業規模が急拡大した。こうしたクラウドサービス企業がイノベーションを実装する手段としてASICを使う機会が急増している。

 我々はクラウドサービス企業がASICを欲することに5~6年前から着目し、その頃から、スマートフォン向けやデジタル民生機器向けASSP事業に加えて、ASIC事業も行ってきた。発表はしていないが、我々のASICを使っているユーザーはすでにいる。今のところMediaTekにおけるASIC事業の比率は小さいが、これから数年間はASIC事業の成長率は2桁以上を維持するとみている。

エレクトロニクス業界の構造が変化。MediaTekのスライド
エレクトロニクス業界の構造が変化。MediaTekのスライド
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