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 電子部品同士をつなぐ役割を果たすプリント基板は、ほぼすべての電子機器に欠かせない存在だ。そんな身近だけれど”裏方の存在”のプリント基板の製造工程を追うべく、埼玉県所沢市に本社工場を構える省栄プリント製作所に工場見学をお願いした。前回は定尺の銅張積層板を裁断してから配線を形成する工程までを見てきた。今回は、その続きの工程であるソルダーレジストの形成から出来上がりまでを追っていこう。

 ソルダーレジストとは基板表面に塗られるもので、その名の通り、プリント基板の不要部分にはんだが付着するのを防ぐことが主目的だ。さらに、基板が完成し部品を実装して電子機器として稼働する際には、基板表面にある配線間の電気絶縁性を維持するといった役割もある。

 ソルダーレジストの形成方法にもいくつかの種類がある。量産品で低コストの場合には、版を使ってパターンを形成するスクリーン印刷が向く。ただし、ゴム製のヘラのような道具「スキージ」を使って、加える圧力や角度を調整して、レジストの膜厚などを変える“職人技”が要求される。「実は工場長がスクリーン印刷の職人。いざというときは活躍しているが、これからは職人技をパネル設定やボタン操作で実現できる“オペレーターの仕事”にしていく必要がある」(省栄プリント製作所 取締役 営業部長 伊藤尚氏)。

スクリーン印刷の様子。処理が早いといった利点があるため、引き続き“職人”の育成にも取り組んでいる
スクリーン印刷の様子。処理が早いといった利点があるため、引き続き“職人”の育成にも取り組んでいる
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 そこで同社では、スプレーコーターを「平成27年度補正 ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」を利用して導入した。スプレーコート法では、感光性樹脂を基板全面に噴霧し、仮乾燥後にマスクフィルムを使って紫外線で露光・硬化させ、現像する。

スプレーコート法で塗布したソルダーレジストを露光する
スプレーコート法で塗布したソルダーレジストを露光する
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現像により、不要なソルダーレジストを取り除く
現像により、不要なソルダーレジストを取り除く
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 最後の硬化(ポストキュア、または乾燥)工程によりソルダーレジスト形成が完了する。160℃で40分間。時間厳守のため、オペレーターはその場から離れられない。装置付近の室温は夏場になると約45℃にまで高まるという。

硬化のための乾燥工程。夏場は暑さのためにオペレーターがやせると言われているらしい
硬化のための乾燥工程。夏場は暑さのためにオペレーターがやせると言われているらしい
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