公正取引委員会(公取委)は携帯電話市場の競争政策上の課題を整理するため、2018年4月から「携帯電話分野に関する意見交換会」を開き、5月29日に最後の会合を終えた。今後は報告書をまとめる予定で、6月中の公表が濃厚とみられる。
開催した会合は計3回。2016年8月に公表した報告書「携帯電話市場における競争政策上の課題について」のフォローアップの位置付けとなり、新たに接続料の問題や消費者アンケートに基づいた分析などにも踏み込んだ。
開催日 | 概要 | |
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第1回 | 4月13日(約3時間) | ・意見交換会の趣旨や目的 ・フォローアップの論点 ・携帯電話大手3社へのヒアリング |
第2回 | 5月15日(約3時間) | ・接続条件及び接続料等における競争政策上の課題 ・MVNO(仮想移動体通信事業者)3社へのヒアリング |
第3回 | 5月29日(約2時間) | ・消費者アンケートの分析を通じた競争政策上の課題 |
公取委によると、報告書は意見交換会の単なる「とりまとめ」ではなく、自らの見解を踏まえたものにするという。つまり、意見交換会で議論しなかった内容まで入る可能性が高そうだが、公取委は方向性を含め、一切明らかにしていない。このため、以下ではこれまでの議論を中心に振り返り、注目ポイントを整理したい。
「4年縛り」にメス?
第1回会合では携帯電話大手3社に対し、「通信契約と端末販売の分離」「SIMロック」「期間拘束・自動更新付契約」「中古端末の流通促進」「MVNO(仮想移動体通信事業者)への加入者管理機能(HLR/HSS)の開放」などの状況に関するヒアリングを実施した。
もっとも、前回の報告書を公表した2016年8月当時に比べると、総務省の努力もあって状況はだいぶ改善した。例えばSIMロックは、端末の一括払いであれば支払いの確認後、割賦払いであれば100日経過後に解除できる(端末の発売時期などの条件は付く)。今後は中古端末(盗品や不払いの端末を除く)も解除の対象に加わる。HLR/HSSの開放も既に始まった。
課題が残るとすれば、期間拘束・自動更新付契約。意見交換会が始まる前に一部で報じられた通り、「4年縛り」が標的となる可能性が高い。中でもソフトバンクの「半額サポート for iPhone」やKDDI(au)の「アップグレードプログラム EX(a)」、NTTドコモの「機種変更応援プログラムプラス」などに代表される端末取り換えプログラムだ。
ソフトバンクやKDDIは端末の取り換えに当たってプログラムの継続を条件としており、「4年縛りどころか、半永久的な縛りに近い」(有識者)という指摘が出ている。公取委が独占禁止法上、問題と見なす可能性がある。端末取り換えプログラムではNTTドコモを含む大手3社が旧機種の回収を条件としているため、中古端末の国内流通がますます進まなくなる問題にもつながる。
4年縛りを巡っては、総務省が2017年12月~2018年4月に開催した「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」でも是非が問われた。ただ、現状では特に問題となっていないため、消費者保護ガイドラインにおける契約前説明の対象とするだけにとどまった。見方を変えれば消費者保護ガイドラインの改正でお墨付きを得た格好だが、公取委が別の観点で問題を指摘する可能性は十分にあり得る。