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 買い物客が帰り、静まり返った閉店後のスーパー。商品棚に沿って移動する1台の縦長なロボットが無言で働いている。

東芝テックが開発した「棚監視ロボット」
東芝テックが開発した「棚監視ロボット」
(出所:東芝テック)
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 「棚監視ロボット」の仕事は、商品を陳列する棚の至る所に付けられた値札の売価チェックだ。スーパーやディスカウントストアは頻繁に特売を行う。そのたびに棚に付いた値札の価格表示を変更する。そして特売期間が終わると元の売価に戻すという作業を、店員は毎日のように繰り返している。

 値札は店内に何百、何千とある。開店前の忙しいなか、確認作業は非常に手間がかかる。1つでも変更漏れがあり、特売時に値下げした売価表示のまま開店してしまうと問題が起きる。

 買い物客は値下げされた売価を見て「安いな」と思い、商品をかごに入れる。ところが会計時にレジの画面やレシートに表示された価格が、先ほど棚の値札で見た金額より高いことに気づくと、その場でクレームになる。値札の変更確認は地味ながら、とても気を使う作業なのだ。

 店舗にもよるが、値札のチェックは閉店後の深夜や開店前の朝に、店員が人海戦術で最終確認する。それが一般的な姿だ。人手不足のなか、今後もこの作業を毎日続けるのはつらい。

 こんな面倒な作業はなくせないか。POS(販売時点情報管理)レジ最大手の東芝テックは考えた。そして国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として、2018年5月21日から6月20日までの1カ月間、値札チェックを自動化したロボットの実地試験に取り組んだ。

 実験場所は、都内を中心にディスカウント型のスーパーを展開するオーケーの橋場店(東京都台東区)。オーケーは東芝テックのPOSレジを使っている顧客企業の1社だ。今回は東芝テックのほうから「実験のために閉店時間帯に売り場を使わせてほしい」と依頼した。

 オーケーは安売りを目玉とするスーパーなので、価格にとても敏感だ。売価は周辺の競合店よりも安く設定されている場合が多い。その代わり、まとめ買いを前提とした大きめの商品サイズが多い。肉は塊で販売したり、お菓子は袋詰めセットを数多く取りそろえたりしている。

 そのため、店内で使用するカートは米国のスーパーなどでよく見かける大型のものになっている。売り場の通路幅も広い。カートが動きやすいように、段差も少ない。おまけにオーケーは手書きの値札をほとんど使っていない。こうした実験には打ってつけの条件がそろったオーケーに、東芝テックが声をかけた。