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 中小企業向けにクラウド会計サービスを提供するベンチャー企業のfreeeとマネーフォワードは2018年7月、相次いで予算・実績管理やキャッシュフローの分析といった経営管理機能の提供を発表した。freeeは自社で新機能を開発、マネーフォワードは該当機能を提供する企業に出資することで、新分野に乗り出す。サービス提供から撤退するプレーヤーも出始めた激戦のクラウド会計市場で、新たな競争が始まっている。

 「これまでの会計処理の業務効率化だけでなく、経営の可視化や資金繰り問題の解決など経営を支援する新分野に注力していきたい」。7月2日に新機能である「予算・実績管理」を発表したfreeeの佐々木大輔CEO(最高経営責任者)はこう強調する。予算・実績管理を皮切りに、今後プロジェクト会計や資金繰りのシミュレーションといった機能も提供していく方針だ。

freeeの佐々木大輔CEO(最高経営責任者)
freeeの佐々木大輔CEO(最高経営責任者)
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 freeeは経営管理機能と同時に、従業員数20~100人程度の企業を対象にした「プロフェッショナルプラン」を開始した。これまでfreeeは20人程度の企業を対象にした料金体系は用意していたものの、それ以上の企業規模への導入を想定した料金体系はなかった。経営管理機能はプロフェッショナルプランから利用できる。新分野にサービス領域を広げることで、より大きな規模の企業への導入を進めたい狙いだ。

 佐々木CEOは、「既に従業員数数百人の企業への導入実績もある。より規模の大きい企業へは、自社の提供するサービスだけでなく、他社のクラウドサービスと連携することでERP(統合基幹業務システム)のような形にして導入を進めていきたい」と話す。

公認会計士が作った会社を子会社化

 導入対象となる企業規模の拡大を目指すfreeeに対し、マネーフォワードは既存の顧客層を主要なターゲットとする。辻庸介社長兼CEO(最高経営責任者)は、「中小企業でも経営管理の機能のニーズは高い」と指摘。法人向けのクラウド会計サービス「MFクラウド会計」の層に向け、新機能を提供する。

 同社は7月5日、経営分析のSaaS「Manageboard」提供するナレッジラボに約2億円を出資し、株式の51%を取得して子会社化すると発表した。Manageboardは、会計システムからデータを取り込み予算と実績の差異を自動分析したり、キャッシュフローを予測したりする機能を提供する。

ナレッジラボの国見英嗣社長(左)とマネーフォワードの辻庸介社長兼CEO(最高経営責任者)
ナレッジラボの国見英嗣社長(左)とマネーフォワードの辻庸介社長兼CEO(最高経営責任者)
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 マネーフォワードは今後、MFクラウド会計とManageboardの連携機能を強化する。「Manageboardは複数のクラウド会計サービスと連携できる方針は維持したまま、MFクラウド会計とは一体化するような開発を進める方針になるだろう」とナレッジラボの国見英嗣社長は話す。

 マネーフォワードの辻社長は、「ナレッジラボの子会社化はManageboardだけではなく、人材の獲得にもある」と説明。公認会計士や税理士が中心であるナレッジラボを子会社化することで、「当社のような規模の企業ではなかなか獲得できなかった人材と一緒に、新たなサービスラインを拡充できる」(同)とした。