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古谷 賢一=株式会社ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
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古谷 賢一=株式会社ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)


 自動車業界で燃費・排出ガス測定の検査不正が発覚した。2018年6月にSUBARUがこの不正に関して謝罪会見を開くや、7月に日産自動車が、8月にはスズキ、マツダ、ヤマハ発動機が立て続きに謝罪会見を余儀なくされた。検査不正の割合は大小あるが、日産自動車は国内5工場全体で5割を超え、スズキの主力工場に至っては7割を上回る。一方で、「再検査の結果、仕様を満たしている」「リコールはしない」とも5社は主張する。この検査不正問題をどう捉えるべきか。「技術者塾」において「世界で戦える工場マネージャー養成講座」の講座を持つ、ジェムコ日本経営本部長コンサルタントの古谷賢一氏に緊急寄稿を依頼した。(日経 xTECH=近岡 裕)

 2018年6月に発覚した自動車の燃費・排出ガス検査不正の問題が、その後の調査で他社でも同様に発生していることが明らかになった(図1)。出荷したクルマの品質そのものへの影響はないとして、「リコールなどの処置は取らない」と問題を起こした企業は言う。そのため、一部には「大した問題ではない」という声もあるようだ。だが、それは間違っている。この問題は極めて深刻に受け止めるべき事案だ。

 事情や背景はさておき、検査において規定された方法や条件を満たさない状態で得られたデータを「有効」とすることは、検査自体を無意味なものとしてしまう。適切なデータを使っていない検査は、当然、その結果を保証できない。すなわち、それは検査していないことと同じだ。いわば、検査という重要な工程に対する「工程飛ばし」(Process skip)が行われていたと言っても過言ではない。この「工程飛ばし」はものづくりの秩序から見て、重罪である。

図1●スズキの会見の様子
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図1●スズキの会見の様子
同社社長(中央)が頭を下げた。(写真:日経 xTECH)

検査の目的が薄れて形骸化していないか

 そもそも検査とは、何が目的か。JIS(日本工業規格)は、検査を次のように定義している。
「品物又はサービスの一つ以上の特性に対して、測定、試験、検定、ゲージ合わせなどを行って、規定要求事項と比較して、適合しているかどうかを判定する活動」──。

 つまり、検査とは仕様など決められた事項に対し、目の前にある製品や製品群が適合しているか否かを見極めることだ。もっと分かりやすく言えば、「良品か不良品か」を判別することである。また、良品か不良品かを見極める最終目的は、製品の品質を保証することとなる。

 保証とは「大丈夫だ、確かだとうけあうこと」と「広辞苑」(岩波書店)は書いている。製品を購入する顧客に対し、「この製品は仕様や規則などを全て確実に守っているので、安心して使ってください」と請け合うこと。これが、品質保証の本来の意味である。従って、検査はその品質を保証するための極めて重要なゲート(関門)でなければならない。

 不正問題を起こした会社や工場は、検査の本来の目的を見失っているのではないか。検査の目的が本来の目的からすり替わってしまうと、検査そのものが形骸化する。検査が形骸化することは、顧客視点を失うことに他ならない。そして、顧客視点を失うということは、企業としての生命線を自ら断ち切ることを意味する。