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 ディスプレー技術の国際会議「18th International Meeting on Information Display(IMID 2018)」(2018年8月29~31日、韓国・釜山)のシンポジウムは、8つの会場で3日間、同時に進行された。筆者は有機EL(OLED)、フレキシブル、マイクロLED、パネル製造技術・装置関連のセッションを中心に聞いたのだが、5月に米国で開催された学会「SID」と比較して全体的に実用化を意識した発表が多く、非常に興味を持って聞くことができた。以下、筆者が興味を持った発表について簡単に紹介したい。

LG、車載向けに長寿命の有機EL素子構造を提案

 有機ELのセッションでは、韓国LGディスプレー(LG Display)が車載用の新しい有機EL素子構造を発表した(論文番号A9-4)。車載用では高輝度の静止画像を長時間表示しなければならないため、民生用に比べて格段に高い信頼性が要求される。そこで、LGディスプレーはRGB塗り分け型の有機EL素子をタンデム構造にすることにより、従来と比較して1.5倍の効率と4倍の長寿命化を実現した(図1)。素子構造はかなり複雑になってしまうが、効率が向上して電流密度を下げられるため、長寿命化には有利な構造である。

図1 LGディスプレーが発表した車載用の新しい長寿命有機EL素子構造
図1 LGディスプレーが発表した車載用の新しい長寿命有機EL素子構造
発表資料(論文番号A9-4)を基に筆者が作成。
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 この構造を実現するためには、FMM(Fine Metal Mask)をそれぞれの色で2回ずつ使用しなければならない。このため、発光層(EML)だけで6回のFMMアライメント蒸着が必要になる。正孔輸送層などの膜厚制御で共振構造を作り込む場合には、さらにFMM工程を追加しなければならない。

 「FMM工程が増えると歩留まりが低下して、コストが高くなってしまうのでないか」と質問したところ、「民生用ほどの高精細ではないため、FMMの設計に十分余裕があり、FMMの変形による歩留まり低下は無視できる」という回答をいただいた。しかし、量産する場合にはインラインプロセスが基本なので、従来以上に非常に長い蒸着ラインになりそうである。

 会場では筆者の元同僚や、有機EL最大手の韓国サムスンディスプレー(Samsung Display)の状況に詳しい知り合いが多数いたので、サムスンの最新動向についても聞いてみた。今回展示した車載用の有機ELパネルはすべて、実際に自動車メーカ-に売り込んだサンプルだそうである(関連記事「マイクロLEDのフィーバーは一段落、冷静な議論が始まる」の、「サムスンが車載用有機EL製品化への意気込みを示す」の項を参照)。

 サムスンディスプレーとしては焼き付き寿命を保証できる最高輝度として白輝度400cd/m2(高輝度モードで600cd/m2)を提示したそうだが、残念ながらこの値では受け入れられなかったという。サムスンでさえ現状技術では目標に達しなかったのだから、車載用有機ELには焼き付き寿命を大幅に改善して高輝度化できる新技術が必須なことだけは明らかである。