「ひたちBRTの自動運転バスは他とは違う。実装の最先端をいく」
茨城県日立市のバス路線である「ひたちBRT」の自動運転について、産業技術総合研究所(産総研)の加藤晋首席研究員はこう力を込めた。産総研と日立市は2018年10月19日から28日にかけて、同市内で自動運転バス運行の実証実験をした。他の実証実験と違うのは自動運転だけでなく、周辺の施設を含めてサービスとしての交通手段を提供するMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)を実証した点だ。
自動運転の区間はJR東日本の大甕(おおみか)駅から日立市の道の駅「日立おさかなセンター」までの3.2キロメートルの区間である。1日8便程度運行し、一般モニターを含む乗客を乗せた。自動運転技術を供与したのはソフトバンクグループのSBドライブと、ベンチャー企業の先進モビリティ(東京・目黒)。2社が共同開発した小型バス「日野ポンチョ」の改造車を使った。
2社が共同開発した自動運転バスの実証実験は2018年だけでも東京都大田区や岡山県赤磐市、神奈川県藤沢市など各所で実施された。今回はバス専用道を使う日本初の実証実験である点が異なる。3.2キロメートルのうち、1.3キロメートルは専用道を走り、残りは一般道を走る。
日立市は、旧日立電鉄線の廃線跡地をバス専用道として整備し、2013年にバス路線のひたちBRTを開通させた。ひたちBRTの普段の運行は、みちのりホールディングス傘下の日立電鉄交通サービスが担当している。自動運転バスにも同社の運転手が同乗する。
一般道区間では、路上駐車が進路を妨害したり、歩行者が飛び出してきたりしたときは、運転手が手動で操作する。一方で、専用道区間は他の車両や歩行者が入り込まない。この区間は、運転手が介入せず運転操作をコンピューターに任せる「レベル4」相当の自動運転で走る。
ただし、専用道で自動運転バスを走らせるだけなら、技術的なハードルは低い。係員を乗せない完全無人運転を実現するには複数の課題が残る。無人運転バスの社会実装を目指して、運転技術以外の課題の解決を図るのが今回の目的である。
バス停のQRコードで料金収受
まず、料金の収受がある。ワンマンバスでは運転手が料金を収受するが、無人運転ではそのための人がいない。ひたちBRTの通常運行バスではIC乗車券を導入しており、運転手がタッチの有無を監視しているが、無人ではそれができない。
ひたちBRTの自動運転バスは、乗車時にスマートフォン上の電子チケットを取得する仕組みを取り入れた。システムはジョルダンが開発した。