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 テルモが約30年ぶりに物流システムを刷新した。グローバルで基幹系システムを順次再構築するプロジェクトの第1弾として、2018年5月に日本の物流システムが稼働した。「稼働当初は不具合があったが修正を重ねて、無事に稼働している。現場での利用も定着してきた」と竹内克也執行役員CIO(最高情報責任者)情報戦略部長は話す。

 テルモは現在、日本、欧州、米国、アジアと個別に導入してきた基幹系システムを、欧州SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージ「S/4HANA」に統一するプロジェクトを進めている。プロジェクト完了は2024年の見込みだ。

 同社がまず物流システムの刷新から着手したのは、システムの老朽化が進んでいたためだ。「1986年から稼働しているメインフレームがブラックボックス化して、保守に限界があった」(竹内CIO)。

 テルモはこれまで物流システムの刷新に2度失敗している。1回目は2000年代前半、2回目は2010年ごろで、いずれも物流システムを含めた基幹系システムを刷新する計画だった。2回のプロジェクトの結果、物流システム以外の会計、生産などの基幹系システムは、自社開発または米オラクル(Oracle)のERPパッケージ「Oracle E-Business Suite」などを利用して構築を完了させた。だが物流システムはプロジェクトの途中で頓挫し、メインフレームの利用を続けていた。

 2015年、テルモはグローバルITガバナンスを確立するプロジェクトに着手し、その一環として基幹系のグローバル刷新を計画した。このうち物流システムの刷新プロジェクトは2016年の8月にキックオフした。2018年5月の新システム稼働まで、実質的な開発期間は2017年の1年間だった。

プライムのパートナーを作らない

 過去2回刷新に失敗した物流システムを2年弱で刷新できた理由は、「過去の失敗を踏まえて、経営、情報システム部門、パートナー企業、ユーザー部門の4つの観点で、順守すべき方針を打ち出し、徹底したからだ」と竹内CIOは話す。過去のプロジェクトが失敗に終わった原因を分析するため、当時のプロジェクトのパートナー企業や社内のユーザー部門など、様々な関係者にヒアリングして、順守すべき事項を策定した。方針の中身は「プロジェクトマネジメントの教科書に書いてあるような常識的な内容であり、特別なことは何もしていない」と竹内CIOは語る。

テルモが今回のプロジェクトで打ち出した方針
テルモが今回のプロジェクトで打ち出した方針
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 経営層向けには、プロジェクトを経営の問題として捉える方針を打ち出した。以前のプロジェクトは経営層の責任が曖昧になっている部分があったためだ。プロジェクトオーナーを社長として、経営層がプロジェクトの進捗を管理する体制を採った。「進捗を共有するために、小さいリスクでも経営層に報告するなど、プロジェクトの状況のありのままを伝えるようにした」(竹内CIO)という。

 情報システム部門には、自らプロジェクトを推進するという意識を強く持つよう促したという。過去のプロジェクトを振り返った結果、「失敗の原因の1つに、パートナー企業に開発の丸投げをしていた部分があった」(竹内CIO)ことを反省した。過去の失敗プロジェクトにおいて、情報システム部門はテルモ内のユーザー部門とパートナーであるITベンダーを仲介する役にとどまっていた。

 今回のプロジェクトは、パートナー企業の位置づけを「プロジェクトの人員が不足する際にのみ支援を依頼する」とし、情報システム部門がプロジェクトマネジメントなどを担う体制とした。