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 あまたの大手電機メーカーの液晶事業部門をルーツに持ち、“日の丸液晶”と呼ばれるジャパンディスプレイ(JDI)。上場から右肩下がりの続く株価が物語るように、同社のイメージは芳しくない。「日本の古株企業と産業再生機構によって作り上げられた」「なかなか変革できない」「体制が古い」「スピードが遅い」――。こうしたネガティブな印象を抱く読者は多いだろう。

 そこに風穴を空けようと、挑む男がいる。同社 常務執行役員チーフマーケティングオフィサー(CMO)の伊藤嘉明氏だ。スマートヘルメットの発表、B2C事業への参入、リカーリング事業への参入、新機軸の発表会の開催など、これまでも数々の斬新な取り組みを進めてきた。その伊藤氏が次に打って出たのが、アジアのベンチャー企業が集まる香港のイベントへの出展。2018年10月18~21日に香港で開催された「STARTUP LUNCHPAD」(主催:global sources)のスタートアップスペースに、フレッシュなベンチャー企業と肩を並べてJDIがブースを構えた。

 あえて、アジアのイベントのスタートアップコーナーに出展したのはなぜか。その狙いについて、伊藤氏に香港現地で話を聞いた。

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 液晶パネルを製造し、顧客に供給することを生業としてきたJDI。同社は長年、価格変動の激しい事業環境と顧客の要望に翻弄されてきた。これまでの経営は「いかにコストダウンするか」「経営どうするか」がほぼすべてだった。そこから脱却できなかったのは、JDIにも事情があった。電機メーカー6社(東芝、日立製作所、ソニー、パナソニック、セイコーエプソン、三洋電機)と産業革新機構の7企業をルーツに持つ故に、まず統合することが最優先となった。これまでの経営者は、この統合作業で手いっぱいだったのである。

 苦労した統合にようやく見通しがついたこともあり、JDIの3人目のCEOである東入来信博氏は、JDIを本気で変革するために、あえてディスプレー業界の外から、しかも電機業界では異端児とされる伊藤氏を迎え入れる賭けに出た。2018年8月のスマートヘルメットの発表に象徴されるが、伊藤氏の行動は周囲の想像をはるかに超える。それは、良い意味でJDIの劇薬となるのだろうか。