ユーザーの顔や体を映すだけでなく、様々な情報を提供する「デジタルミラー」の利用が、じわじわと広がりつつある。中でも、店舗などで元々置いていた鏡をデジタルミラーに置き換え、顧客に向けた情報伝達に利用する用途に期待が集まっている。
国内の美容業界では、資生堂が顧客の肌測定の結果や商品紹介、使用方法など動画を活用して伝える「デジタルカウンセリングミラー」を採用している。顧客に対して店員が接客しながら化粧品を販売する対面販売時に利用する。パナソニックは美容家電を専門に展示販売する「Panasonic Beauty SALON 銀座」に、顔認識技術を使ってシワや毛穴、潜在シミなどの肌分析を行い結果を表示する「スノービューティミラー」を設置している(関連記事)。
こうした用途では、今のところ対面販売時のコミュニケーションツールとして使われているものの、気軽な来店・接客を促すため、店員を省いたりサービス自体をオンライン化したりする動きも透けて見える。
一方、店員がいるからこそのサービスにデジタルミラーを活用しようという動きも出てきた。花王・カネボウのグループ会社であるエキップが、百貨店などでの対面販売に絞り込んで展開する高級ブランド「SUQQU(スック)」で、そうした動きをする。SUQQUは、中年層を主な顧客ターゲットとしたブランドで、肌の衰えをカバーする高価格帯化粧品を扱う。
エキップは、カメラとディスプレーを使った、米メモミラボ(MemoMi Labs)のデジタルミラーをSUQQU向けに採用する。メモミラボは小売店向けのデジタルミラーを開発するシリコンバレーのスタートアップ企業で、アパレル(衣類)向けに試着の手間を省く全身デジタルミラー「MemoryMirror(メモリーミラー)」などを展開している。
今回、エキップはメモミラボの製品のうち、口紅やアイシャドウなど、顔を装うメイクアップ化粧品の販売支援に向けた卓上型デジタルミラーを採用した。SUQQUブランドの設立15周年を記念するイベント「SUQQU 15th ANNIVERSARY POP UP EVENT “美の衝撃” 」(2018年9月7~9日、東京表参道のSO-CAL LINK GALLERY)で披露した(プレスリリース)。その後、GINZA SIX店などの主要な数店舗で順次導入を予定する。