「Rust Belt(ラストベルト)」――。自動車や鉄鋼、石炭などの主要産業が衰退した米国中西部から北東部に位置する地域は通称、“さびついた工業地帯”と呼ばれる。「rust」は金属の「さび」という意味だ。
五大湖周辺にまたがるラストベルトの各都市が新たな産業創出を模索する中で、コネクテッドカー(つながるクルマ)の開発で輝きを取り戻そうとしているのがオハイオ州である。ホンダや米GMなどが工場を構える製造業の街は、自動車生産に次ぐ柱を育てる取り組みを急ぐ。
「すでに3000台のコネクテッドカーがオハイオの公道を走り回っている」。手応えを口にするのは、米国オハイオ州で経済開発を担うジョブス・オハイオ(JobsOhio)のSenior Managing Directorで自動車部門の責任者を務めるクリスティ・タナー(Kristi Tanner)氏である(図1)。
ホンダが「スマート交差点」の実証
オハイオ州の特徴は、「コネクテッドカーの開発試験を公道で実施する環境が整っていること」(同氏)だ。2018年10月には、ホンダがオハイオ州メアリーズビルで、V2X(車車間・路車間)通信を使った「Smart Intersection(スマート交差点)」技術のデモンストレーションを実施したばかりである(図2)。
ホンダによる公道実験は、オハイオ州が主導するプロジェクト「33 Smart Mobility Corridor project」の一環。コネクテッドカーの試験を実施できる環境を、同州の州都コロンバス市から延びる「ルート33」(国道33号線)沿いに整備した。