「フィンテック」から「アグリテック」、「スポーツテック」など、デジタル技術やIoT技術の浸透領域が広がるにつれて「○○テック」が大量増殖している。その中で台頭しつつあるのが「ビューティーテック」だ。
そんなビューティーテックに関するシンポジウムが、化粧品や健康食品など美容・健康に関する総合展示会「第17回 ダイエット&ビューティーフェア 2018」(2018年9月10~12日、東京ビッグサイト)の中で「第1回ビューティテック シンポジウム」として、2018年9月12日に開催された。現時点でビューティーテックの柱となるのは、eコマースを中心とした、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)といったデジタル技術が活用のようだ。美容に関する購買体験が大きく変わりつつあると、業界関係者は期待を見せる。
ビューティーテックの鍵は、現場で接客したときのデータをどうやって取り、どう整理し、どう共有して知見として生かすか――。こう話したのは、基調講演を行ったLDH JAPAN 執行役員でCDO(チーフ・デジタル・オフィサー) デジタルマーケティング本部 本部長の長瀬次英氏だ。長瀬氏はインスタグラムの日本事業代表責任者を担った後、2018年7月までは日本ロレアルでCDOを務めていた。長瀬氏は、化粧品業界も顧客の要望を起点に商品を開発するカスタマーセントリシティに変わるべきとし、顧客のニーズを探るためには「期待値マーケティング」が必要という。
そこで重要になるのが「現場のニュアンス」だ。「デジタルマーケティングはeコマースなどのデータを重視するばかりで、現場をおろそかにしがちだった。米アマゾン・ドット・コムの購買データのような、既にデータになっている情報はいくらでも集められるので数年後に企業間のデータの差はなくなる。一方で、顧客との距離感を把握しながらのビジネスは現場でしかできない」(長瀬氏)。
さらに、ロレアルグループで経験した国・地域による違いから、「日本の顧客はeコマースが強い中国や、SNS・コミュニティーが強い欧米に比べて、“店頭で現物を確かめて購入したい”という要望が強い。一方、店側には“おもてなし”と表現されるように日本人特有のサービスの仕方があるが、相手が何を期待しているのかが分からなければおもてなしはできない。だからこそ現場でどんなデータがとれるかが、大きなビジネスドライバーになる」(長瀬氏)とした。具体的には、店頭での顧客の表情、声、待ち時間の様子などの情報の取得や整理が必要で、集めるデータや使うツールを適材適所に運用して各ビジネスに合わせたデジタル化を図るべきとした。