デンソーは、「電子ミラー」用のECU(電子制御ユニット)を開発した。トヨタ自動車が2018年10月に発売した「レクサスES」への採用を勝ち取っている(図1)。サラウンドビューカメラ(360度カメラ)用ECUの部品や技術を流用することで、短期間で開発できた。
電子ミラーは、後写鏡(ドアミラーやルームミラー)の代わりにカメラとディスプレーで周囲を確認する技術である。レクサスESは、世界で初めてドアミラーを“電子化”した量産車だ。トヨタの今泉一仁氏(Lexus International製品企画主幹)によると、「レクサスES向けの開発が始まったのは2016年後半で、約1年半で量産にこぎつけた」という。
自動車向けの新技術は2~3年の時間をかけて量産化するのが一般的で、わずか1年半で仕上げた今回の電子ミラーは異例と言える。電子ミラー用ECUの開発を担当したデンソーの野々山祐次氏(AD&ADAS技術4部第3技術室技術1課長)は、「ものすごくタイトな日程の中で、『世界初』の実現に向けて急ピッチで開発を進めた」と振り返る。
開発期間を短縮するためにデンソーが採ったのが、「サラウンドビューカメラ用ECUのノウハウを積極的に活用すること」(野々山氏)だった。カメラのレンズや画角の違いはあるのもの、カメラで撮影した映像をディスプレーに表示するという機能自体は、電子ミラーとサラウンドビューカメラで共通する。象徴的なのが画像認識SoCで、ルネサスエレクトロニクス製の「R-Car V2H」で同じだ。