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 トレンドマイクロが提供する米アップル(Apple)のiOSとmacOS向けのアプリケーションが、アップルのソフトウエア提供プラットフォーム「App Store」と「Mac App Store」で一斉に公開停止になるトラブルから4カ月が経過した。2018年9月のトラブル発生当初、一般消費者は例えば「ウイルスバスター モバイル(iOS版)」をApp Storeから入手できなくなり、店舗などでパッケージ版を購入してもインストールできなかった。

 2019年1月15日時点で大方のアプリは公開を再開しているが、一部でトラブルは続いている。日経 xTECHの取材でトラブルの真相が見えてきた。経緯を振り返りながら整理していく。

「ウイルスバスター モバイル(iOS版)」の提供再開に関する告知
「ウイルスバスター モバイル(iOS版)」の提供再開に関する告知
(出所:トレンドマイクロ)
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メモリー節約アプリでブラウザーの履歴を収集

 発端は2018年9月7日(米国時間)に米国の情報セキュリティーソフト会社が公開したブログだ。「トレンドマイクロ製のmacOS用メモリー節約アプリ『Dr. Cleaner(日本名ライトクリーナーLE)』がブラウザー履歴をユーザーに明示せずに取得している」とする内容だった。トレンドマイクロのアプリがスパイウエアのように動作していると危険性を指摘した。

 9月10日に、少なくとも米国と日本でトレンドマイクロがMac App StoreとApp Storeで公開する全アプリが公開停止になった。日本で公開停止になったのはmacOSアプリが2種、iOSアプリが「ウイルスバスター モバイル(iOS版)」や「パスワードマネージャー(iOS版)」などの主力製品を含む11種である。macOSアプリで指摘された問題が発端となり、iOSアプリまで公開停止になった格好だ。

 公開停止後、トレンドマイクロは9月12日と10月5日、10月24日、10月31日に経緯を公表。「関係各位に多大なるご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」と謝罪しつつ、米アップルとの調整を進めていると報告した。

 トレンドマイクロのエバ・チェンCEO(最高経営責任者)は10月30日、日経 xTECHの取材に応じ、「個人情報取得の同意を取るときの説明が分かりにくかった」と問題点を認めた。ブラウザー履歴を取得して脅威情報を収集・分析する取り組みについては「セキュリティー企業としての同社のDNAだ」と説明した。

日経 xTECHの取材に応じたトレンドマイクロのエバ・チェンCEO(右)とケビン・シムザーCOO(左)
日経 xTECHの取材に応じたトレンドマイクロのエバ・チェンCEO(右)とケビン・シムザーCOO(左)
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 11月中旬から事態は収束に向かう。11月17日からパスワードマネージャー(iOS版)、11月19日からウイルスバスター モバイル(iOS版)などの公開が再開された。アップルとの調整に基づき、トレンドマイクロが個人情報取得の同意などのプロセスを改修したものだ。

 ただし、ウイルスバスター モバイル(iOS版)は、公開停止前に利用できた主要機能のうち「コンテンツシールド」機能が使えなくなった。iOSが標準で備えるSafariブラウザーや、Facebook アプリやLINEアプリなどが備えるアプリ内ブラウザーでWeb脅威対策や広告ブロックをしたり、保護者による利用制限をしたりする機能である。

 2018年12月26日からはコンテンツシールド機能が使えるようになった。ただし、広告ブロック機能はSafariでは使えるもののアプリ内ブラウザーでは使えないままだ。この点については、2019年1月15日時点でもアップルとの調整が続いているという。