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 ルネサス エレクトロニクスは2019年1月21日、「インダストリアルソリューション事業」の報道機関向け説明会を開催した。マイコンに人工知能(AI)の機能を実装する「e-AI」のロードマップを示すとともに、e-AIを活用したモーター制御などのデモンストレーションを披露した。

約200社が採用を検討

 同社のインダストリアルソリューション事業は、家電やFA(Factory Automation)、電力といった分野が対象で、同社全体の売上高の約30%を占めている。これらの分野ではAIやIoT(Internet of Things)によるスマート化が進んでおり、2021年までの市場規模の年平均成長率(CAGR)は9%と高い水準が見込めるという。

ルネサス エレクトロニクス 執行役員常務 兼 インダストリアルソリューション事業本部長の横田善和氏
ルネサス エレクトロニクス 執行役員常務 兼 インダストリアルソリューション事業本部長の横田善和氏

 そうした市場の成長を捉える原動力となるのがe-AIだ。「AIの学習と推論を切り分けることで、推論に特化したコストパフォーマンスの高いマイコンをエンドポイントの機器に組み込める」(同社 執行役員常務 兼 インダストリアルソリューション事業本部長の横田善和氏)。

 e-AIの開発ロードマップは3段階から成り、マイコンの性能を各段階で10倍ずつ、最終的に従来の1000倍に高めていく計画である。第1段階の性能向上は処理内容ごとにハードウエア回路を動的に切り替えるDRP(Dynamically Reconfigurable Processor)技術の採用、第2段階はDRPを構成するプロセッサーエレメント(PE)数の増加、第3段階は微細化などによって実現する。その第1段階となるMPUの新製品「RZ/A2M」を2018年10月4日に発表し、サンプル出荷を開始した。今後も「18カ月で10倍を目標に性能を高める」(同社 インダストリアルソリューション事業シニアダイレクター 兼 インダストリアルオートメーション事業部長の傳田明氏)。

e-AIのロードマップ。18か月で性能を10倍に高めていく。従来の1000倍(図のClass-4)まで高めると、エンドポイントでの学習も視野に入ってくるという。(出所:ルネサス エレクトロニクス)
e-AIのロードマップ。18か月で性能を10倍に高めていく。従来の1000倍(図のClass-4)まで高めると、エンドポイントでの学習も視野に入ってくるという。(出所:ルネサス エレクトロニクス)
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 同社では、顧客への提供に先立ち、自社の那珂工場でe-AIを活用してきた。具体的には、e-AIを組み込んだ「AIユニット」を既設の半導体製造装置に接続している。現在稼働中のAIユニットは約150台だが、今後は接続対象を他工場も含めて拡大し、3000台に増やす。加えて、GEヘルスケア・ジャパンと共同でAIユニットを活用した実証実験を行うなど、社外での活用も進んでいる。「既に約200社がe-AIの採用を検討しており、2019年から2020年にかけて具体的な事例が出てくるとみている」(ルネサス エレクトロニクスの横田氏)。

那珂工場での活用事例(出所:ルネサス エレクトロニクス)
那珂工場での活用事例(出所:ルネサス エレクトロニクス)
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GEヘルスケア・ジャパンとの実証実験(出所:ルネサス エレクトロニクス)
GEヘルスケア・ジャパンとの実証実験(出所:ルネサス エレクトロニクス)
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