全2387文字
PR

 経験や勘に基づいた手探りの業務改革から、数値に基づいて明確に測定可能な科学的な業務改革へ。業務システムに蓄積したデータを利用して、業務プロセスや業務処理にかかる時間などを可視化する「プロセスマイニング」ツールを使ったコンサルティングサービスを提供する企業が出始めている。プロセスマイニングを利用すれば、業務を進める上でボトルネックとなっている処理や、システム利用者ごとの処理時間などが数値で明らかになる。

 プロセスマイニングツールを利用したサービスを始めたのは、コンサルティング会社のプロティビティやアビームコンサルティングだ。プロティビティは2018年10月、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の効果的な導入の支援を狙い、サービスを日本でも提供すると発表。アビームコンサルティングは2019年1月に、プロセスマイニングを利用して業務プロセスの最適化を支援すると発表した。

 両社がコンサルティングサービスで利用するプロセスマイニングツールが、ドイツに本社を置くセロニス(Celonis)の「Celonis」だ。「ERP(統合基幹業務システム)パッケージに蓄積したデータを利用して、受注から支払いまでといった業務プロセスそのものや、各プロセスにかかった時間を可視化することが主な機能だ」とアビームコンサルティングの大村泰久執行役員は説明する。

プロセスマイニングの概要
プロセスマイニングの概要
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば、欧州SAPのERPパッケージを利用している業務プロセスをCelonisで可視化したい場合、ERPに蓄積したトランザクションデータやログデータをCelonisに投入する。Celonisは既に、主要なパッケージソフトのデータベースのテーブル構造や業務プロセスの標準構成をテンプレートとして用意している。そのため、SAPのERPのデータを投入すると自動的に、業務プロセスそのものや各業務プロセスの処理にかかった時間などを可視化できる。

 Celonisが用意しているテンプレートは、SAPや米オラクル(Oracle)、米マイクロソフト(Microsoft)などのERPパッケージや米セールスフォース・ドットコム(salesforce.com)のSFA(営業支援)サービスなどの代表的なパッケージソフトやSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)だ。ただし「パッケージにアドオン(追加開発)している場合や、自社開発のサブシステムを利用している場合でも、Celonisの設定を調整することで利用できる」(アビームコンサルティングの小川雄輝シニアマネージャー)という。導入期間は長い場合で3~4カ月程度を見込んでいる。

ユーザーID単位で業務のボトルネックを分析

 「Celonisの導入効果は、非効率な業務を可視化できることだ」とアビームコンサルティングの小川シニアマネージャーは強調する。「よく分からないけどA部門の経費処理に時間がかかる」と経理担当者が感じていた業務をCelonisで分析すると、「A部門の部門長が、他の部門の部門長より処理に3倍の時間がかかっている」といったことが示される。「業務に時間がかかるボトルネックを明確に数値で示せるので、業務の変更に抵抗を示す現場があっても説得しやすく、改善もしやすくなる」と小川シニアマネージャーは話す。