新生銀行は2019年1月、およそ17年ぶりに勘定系システムを全面刷新した。米オラクルのインド製パッケージを更新した。インドの開発部隊とのコミュニケーションに手間取り、稼働を1年延期する事態に直面したが、体制を抜本的に見直して乗り切った。刷新した勘定系を土台に、FinTechをはじめとする新事業の創出に挑む。
オラクルフィナンシャルサービスソフトウェア(旧i-flexソリューションズ)製のオープン勘定系パッケージ「FLEXCUBE」をバージョンアップした。総投資額は約220億円。新システムは富士通のLinuxサーバーで動作する。従来システムはWindowsで動いていた。1月の稼働から、目立ったトラブルは起きていない。
バージョンは2から12に
バージョンアップといっても旧システム向けはバージョン2。新システム向けは12と一足飛びに新しいバージョンへと入れ替えた。
実は新生銀は2002年にFLEXCUBEを動かしてから、一度もバージョンアップをしていなかった。必要なシステム投資を捻出できていなかったからだ。リーマンショックを受けて2009年3月期から2期連続で1400億円台の連結最終赤字を計上するなど、新生銀にシステム投資余力は乏しかった。
「2012年に起きたシステム障害が決定的だった」。新生銀の松原正典常務執行役員システム開発部長は、約17年ぶりのシステム刷新に踏み切った背景をこう語る。
2012年1月、新生銀はデータセンターを移転するプロジェクトの最終段階で、他行向けの送金処理が滞るシステム障害を引き起こした。総額64億円あまりの取引が翌日に持ち越しになった。改修を繰り返しながら使い続けてきた勘定系システムに限界を感じた新生銀は、ついに全面刷新を決断した。
2013年初めに勘定系システム刷新の検討を始め、パッケージの選定に入った。現行のFLEXCUBEのバージョンアップに加え、主に地方銀行が使う国産ベンダーのパッケージを新生銀用に改修したシステムなど、3陣営から具体的な提案を受けた。
結果として新生銀はFLEXCUBEを更新する案を採った。FLEXCUBEから他のパッケージに乗り換えた国内の実例が無いなどの理由からだ。新システムへ移行する際のリスクを低減することを最優先した。
同じパッケージの更新とはいえ、プロジェクトのハードルは高かった。2から12へと大幅にバージョンを上げるうえ、旧システムは「年輪のように(改修を)積み上げてきた」(松原常務)。パッケージを使っているとはいえ中身はほとんど独自の「ガラパゴス状態」(同)になっていた。
機能を3層に分類
旧システムを複雑にしてしまった反省から、新生銀は新システムのアーキテクチャーを極力シンプルにした。具体的には新システムの機能を「コア」「JC」「カスタム」の3階層に整理した。
コアは預金や貸し出しなど世界共通の基本機能、JCはボーナス払いなどの日本特有機能、カスタムは支払い猶予といった新生銀固有の機能である。パッケージのうち、コアを担うプログラムには極力手を入れない。カスタマイズするプログラムはJCとカスタムの各層に集約した。