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経済産業省が行政サービスに関するデジタル化の旗振りを本格化させた。2019年1月に、アジャイル開発やクラウド活用による行政サービスのデジタルトランスフォーメーションをテーマにしたイベント「Govtechカンファレンス」などを都内で3日間にわたり開催。自治体やベンダー関係者ら延べ約330人が参加した。
欧米では政府組織にIT部門を置く動きが相次ぐ
国のIT活用政策の総合調整を担う組織としては政府CIO(最高情報責任者)が率いる内閣官房のIT総合戦略本部がある。自治体がIT活用を支援する際の予算などは総務省が握っている。
その中で経産省が行政サービスのデジタル化に意欲を見せるのはなぜか。背景にあるのは地方自治体の深刻な人手不足だ。紙の手続きをデジタル化して働き手の負担を減らし、利用者が使いやすい行政サービスを作らなければ将来はない、という危機感を抱く。
海外では、政府の組織にシステム開発部門を設置する動きが広がりつつある。米国は2014年に大統領直属のUSDS(United States Digital Service)を設立、米グーグル出身者が初代トップに就いた。英国は2011年、内閣に政府デジタルサービス(GDS)を設置した。利用者が使いやすいサービスを迅速にリリースして、市民生活を向上させる狙いがある。
欧米の動きは、既存の行政サービスをITに置き換えるだけでなく、デジタルデータを活用しやすい組織に変革する必要もあることを示している。背景には「デジタル化は単に技術の問題ではなく、組織をどう変革するかという問題」との認識があると、経産省商務情報政策局の吉田泰己情報プロジェクト室室長補佐は指摘する。