「GAFAにも困っている分野がある。どう対抗するかではなく、お互いの困り事を解決し合えば大きなパートナーになり得る」。こう語るのはパナソニックの馬場渉ビジネスイノベーション本部本部長だ。同氏の言葉を体現するように、パナソニックはモノ売りからサービス企業への転換の柱となる新規事業において、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)の一角であるアマゾンとタッグを組んだ。
パナソニックのビジネスイノベーション本部はAI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)、ビッグデータなどを部門横断で活用し、新事業の実用化に取り組んでいる。現在取り組んでいる3分野の事業を合わせて2025年に売上高500億円を目指す。この中でアマゾンとタッグを組むのが、カメラと手のひらサイズのエッジコンピューターによる画像認識AIを組み合わせたIoTプラットフォーム「Vieureka(ビューレカ)」のプロジェクトだ。
アマゾンとの連携は2018年11月下旬に米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が米ラスベガスで開催した年次カンファレンス「AWS re:Invent」で発表した。具体的な取り組みの1つとして2019年2月28日に、AWSのパートナー制度である「AWS パートナーネットワーク(APN)」の加入企業に対し、Vieurekaのパートナーを募るセミナーを開催する。
Vieurekaは店頭などに設置したカメラで来店者を撮影し、エッジコンピューターで性別や年代、笑顔か否かなどのメタデータを取り出してクラウドに送る。福岡県や佐賀県で数百台のWebカメラを設置したスーパーを展開するトライアルカンパニーや、北海道でドラッグストアを展開するサツドラホールディングス(HD)が一部導入済みだ。
リアル店舗をECサイト化
パナソニックのビジネスイノベーション本部でビジョンセンシングPFプロジェクトCEOを務める宮崎秋弘氏はVieurekaの利点をこう語る。「どんな属性の客が何人来店しているのか、どの商品に興味を持っているのかなど、EC(電子商取引)サイトのような情報を実店舗で把握できる」。
特徴は画像認識に使う機械学習モデルや、収集データを活用した各種アプリケーションをクラウド経由で変更できる点だ。API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)やSDK(ソフトウエア開発ツール)を公開・提供しており、サードパーティーが独自の学習モデルやアプリを実装できる。例えばカラーバーコードを認識する学習モデルを開発し、食品工場で従業員の判別に役立てているといった例がある。