「我々が開発するソフトウエアの9割は車載以外になる」――。トヨタ自動車の自動運転子会社、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)は2019年1月30日、同社のソフト開発の考え方についてこのように説明した。
自動運転ソフトは信頼性が重要で、「バグフリー」を実現することが大きな課題になる。そのためには、AI(人工知能)の精度を高める学習システムや、優れたシミュレーション環境などの「ツール」が重要になるという。TRI-ADで開発するソフトは「9割がツールで、車載ソフトは1割に過ぎない」(同社)とした。
こうした考え方はIT分野では常識だが、「今の自動車メーカーには、その発想がない」(同社Director & CTOの鯉渕健氏)という。TRI-ADはシリコンバレーのソフト開発を経験した人材を活用し、その手法を取り込む。クラウドベースの開発環境や、大量のデータに対応できるAI学習環境、OTA(Over The Air)で車載ソフトを頻繁に更新するシステム、ソフト品質の管理ツール、ハードウエアやソフトウエアのシミュレーションツールなどを整備する。
「AWS(Amazon Web Services)など外部のクラウドサービスを有効活用しながら、肝心な部分は内製する」(同社)という。例えば、自動運転のシミュレーションでは、要素部品(コンポーネント)にはなるべく市販のツールを使うものの、それらを組み合わせた全体のシミュレーション環境は自前で開発するほか、各種ツールで足りない機能も自ら開発する。
開発したソフトのオープン化(オープンソース化)にも力を入れる。例えば、高精度地図は最初からオープン化し、さまざまな企業に使ってもらうことでより多くのデータを収集し、地図のメンテナンス・コストを下げる(関連記事)。また、安全な自動運転を実現する「ガーディアン」と呼ぶソフトもオープン化し、さまざまなMaaS(Mobility as a Service)事業者に使ってもらう。
オープンソースの開発者コミュニティーも支援する。例えば、TRI-ADは2018年12月に、オープンソースの自動運転ソフト「Autoware」の普及を目指す業界団体「Autoware Foundaiton」のプレミアムメンバーになった。こうした活動を通じて、企業の垣根を超えた知識やノウハウを取り込んでいく。