三菱自動車の会長兼CEO(最高経営責任者)である益子修氏は2019年2月1日、2018年度第3四半期(2018年4~12月)の決算発表において、3社アライアンスの考え方について説明した。
三菱自は2016年5月に日産自動車と資本提携した。この時、短期間で結論を出せた理由の一つに「フランス・ルノー(Renault)と日産のアライアンスの基本原則への共感があった」(同氏)という。
その原則とは、(1)個々のアライアンスメンバーの経営ブランド、個性を尊重して独立性、自主性が担保されていること、(2)最もコンペティティブなメンバーが、その分野と地域でアライアンスをリードし、徹底的に重複を排除するという考え方、(3)関連するすべてのアライアンスメンバーにとってWin-Winとなるようにプロジェクトを推進すること、だという。
この基本原則に基づくアライアンスへの参加が、当時の三菱自が抱えていた経営問題を解決する「最良のソリューションだと考えた」(同氏)という。資本提携以降の約2年間の経験を踏まえると、「この判断に何ら変化はない」(同氏)。
ただ、その後の経営統合を巡る主導権争いや、2018年11月のカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)氏の逮捕など、ここへ来て状況が大きく変わった。さらに自動車業界には100年に1度の大変革といわれるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の波が押し寄せている。このため、「各アライアンスメンバーがあらためて基本原則と、目的、狙い、必要性を確認し合意することが必要。アライアンスメンバーが価値観を同じくして前に進んでいくことが重要」(同氏)と訴えた。
アライアンスの目的や狙い、必要性については、次のように説明した。「大切なことはアライアンスメンバーであることに誇りを持てること、そして働きがいを実感でき、成果をあげることだ」(同氏)。これらを実現するには「アライアンスパートナーが互いをリスペクトし、対等、平等の精神で仕事に取り組むことが必要」(同氏)とした。
CASEをはじめ、自動車業界が直面する課題は多岐にわたっており、「1社ですべての課題に対処するのは現実的ではなく、信頼できるパートナーが必要だ」(同氏)。「とりわけ規模の小さい三菱自にとっては、アライアンスを有効に活用することが不可欠」(同氏)とする。
具体的な課題として、CASEのほかに、2021年から本格化する欧州、中国、米国での環境規制強化への対応を挙げ、「アライアンスメンバーが得意な技術を持ち寄り、技術を相互補完する形が望ましい」(同氏)と述べた。また、支援してもらうだけでなく、「当社が強みとする地域と、得意な商品を今後さらに強化し、アライアンスメンバーに貢献していきたい」(同氏)と説明した。
アライアンスの基本原則から考えると、3社を経営統合する必要性はないと主張する。「3社を統括する会社は存在しない。日産とルノーが折半出資するルノー・日産BV(RNBV)に三菱自が加わることも考えていない」(同氏)。あくまで3社の対等・平等の精神でアライアンスを運営すべきとし、「何かのエンティティーを想定したり、それが重要な役割を果たしているとはまったく認識していない」(同氏)と強調した。
勾留中のカルロス・ゴーン氏が日本経済新聞社のインタビューで持ち株会社方式での経営統合を計画していたと発言した件についても、「私は持ち株会社について話を聞かされたことはない。もし相談を受ければ、アライアンスの基本原則を踏まえて考えていきたい」(同氏)と述べた。