国内IT大手4社の2019年3月期第3四半期(2018年10~12月)決算が出そろった。富士通、NEC、NTTデータ、日立製作所(「情報・通信システム」セグメント)の2018年4~12月期における売上高は計7兆8480億円で、前年同期に比べ0.7%増えた。営業利益は4社合計で前年同期比29.5%増の3345億円だった。
各社とも国内事業は好調が続く。富士通とNECは今年度中に構造改革を進め、2019年度以降の利益率上昇を狙う。
富士通とNECは構造改革を続行
富士通の2018年4~12月期における売上高は前年同期比3.9%減の2兆8118億円、営業利益は同72.7%増の665億円だった。国内のシステム構築などサービス事業が伸び、ネットワーク機器や半導体の縮小を補った。本業は100億円の増収だがPCと携帯端末の事業売却で1250億円の減収影響があり、全社では3.9%の減収となった。
第3四半期には436億円の構造改革費用を計上した。ドイツ・アウクスブルク工場の閉鎖など欧州の事業再編費用に390億円、国内生産体制の見直しに45億円を引き当てた。国内の生産体制についてはモールド部品を製造する富士通化成を清算するとともに、富士通周辺機が担当していたプリンターや産業用製造設備の製造業務を富士通アイソテックに移管すると決めた。
上期には退職給付制度を変更し、900億円の増益効果を得た。富士通の塚野英博副社長は「上期で得たプラスの数字の範囲内でコントロールしつつ、すべての改革をやり切る」と話す。2018年10月に発表した欧州拠点の削減や国内の間接部門5000人の配置転換などで第4四半期(2019年1~3月)も構造改革費用を計上することになりそうだ。
構造改革を続けるのはNECも同じだ。NECの森田隆之副社長は「実行できる収益改善策を今期中にやり切る」と述べる。2018年10~11月に募集した希望退職には2170人が応募。その費用として約200億円を引き当てた。
NECは2020年3月末に筑波研究所を閉鎖する決定も下した。最盛期に約300人が所属した同研究所には約70人の研究者がいる。そのうち、量子コンピューター分野の30人が共同研究先の産業技術総合研究所に場所を移す。50億円をかけて閉鎖し、2020年度以降に毎年数億円のコスト削減効果を見込む。
NECの2018年4~12月期における売上高は前年同期比3.2%増の2兆347億円、営業利益は同16.9%増の167億円。国内事業が好調で、特に公共分野や流通業、金融業向けの事業が伸びた。国内ITサービスの受注も好調で、同8%増だった。産業や公共の分野で業績の上振れが期待できるとした。
ただし森田副社長は「海外のディスプレーやサービスプロバイダーの事業でそれぞれ20億円程度の減益リスクがある」と説明する。同社は今期から海外事業を「グローバル」セグメントに集約し、新任の熊谷昭彦執行役員副社長に託した。2019年3月期は売上高5050億円、営業損益は損失ゼロを目指すが、第3四半期までは売上高3204億円、営業損失98億円という状況だ。目標達成に向けてぎりぎりの調整が続く。