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 SAPジャパンが新たな人材獲得策を開始した。1年超の長期インターン制度「STAR(SAP Student Training and Rotation)プログラム」だ。大学3年生、もしくは大学院修士課程1年生をインターンとして受け入れ、卒業直前まで働いてもらう合計15カ月間のプログラムである。2019年2月から第1期の学生16人が営業現場などで本格的に働き始めた。ネット企業などが長期インターン制度を採用することはあるが、国内のエンタープライズ系IT企業で実施するのは珍しい。

 STARプログラムの狙いについて、SAPジャパンの福田譲社長は「1年間以上インターンで働いてもらい、当社の良いところも悪いところも知った上で入社してもらいたい」と話す。

SAPジャパンの福田譲社長
SAPジャパンの福田譲社長

 入社前に自社の良いところも悪いところも学生に知ってもらう――。なぜそんなことをSAPジャパンは考えたのか。背景には、ここ数年で新人離職率が急激に悪化している現状がある。同社では、毎年約20人採用している新卒社員のうち、入社3年以内に約半数が退職しているという。一般に、新卒社員の入社3年以内の離職率は約3割といわれているので、SAPジャパンの割合はかなり高いと言ってよい。

 新人が退職する理由で最も多いのは「実際に働き始めたら、入社前に描いていたイメージと違った」というものだ。入社前には想像していなかった地味な仕事を振られたときなどに「こんなはずではなかった」と辞めてしまう。2014年以降、海外大学の卒業生や留学経験のある者を重点的に採用する方針に変えたところ、こうした理由で入社数年で退職する新人が急に増えてしまったという。

 そこで、新人の理想と現実のギャップを少なくするために開始したのがSTARプログラムだ。欧州本社など、SAPの海外拠点では以前から実施していた制度だが、日本法人では初めて実施した。

新入社員並みの手厚い研修

 STARプログラムは単にインターンの期間を延長させただけの施策ではない。「一般的なインターンとは違い、STARプログラムでは、可能な限り社員と同じように働いてもらう」とSAPジャパンの横溝かおりSTARプログラムHRコンサルタントは言う。

 第1期のSTARプログラムの詳細はこうだ。2018年12月に大学3年生と大学院の修士課程1年生を対象に参加者を募集。100人を超える応募があったが、面接を通じて16人を選考した。

 2018年12月から2019年1月までの2カ月間は研修期間である。SAP製品の知識やSAPのビジネスについて学ぶ他、ビジネスマナーや労働倫理といったことも教える。さながら新入社員研修のようだ。

 2019年2月以降、参加者は現場に配属になる。1週間当たり20時間未満の範囲で仕事をする。2カ月ごとに職場を変え、合計4つの部門を体験する。インターン期間は卒業直前の2020年2月まで続く。

 STARプログラムの参加者は随時メンターとミーティングする。入社の意思がある場合はそのことをメンターに伝える。プログラムの期間中に他社の就職活動をしても問題ない。しかも、SAPジャパンに入社しない場合でもSTARプログラムへの参加を続けることは可能だ。逆に、たとえ参加者が入社を希望していても、SAPジャパンが採用しない可能性もあるという。ちなみに、SAPジャパンはSTARプログラムと並行して通常の採用活動も実施する予定だ。