日本生命保険はグループ会社を通じて、病院ベッド(病床)の管理業務を支援するシステムの強化を進めている。電子カルテなどの情報を基に病床の空き具合や看護師の負担度合いを見える化するシステムの機能を改良し、患者を適切な病床に移したり退院時期を決めたりするために必要な情報を自動的に算出できるようにする。
現状の見える化機能に様々な情報の自動算出機能を順次追加し、医師や病院スタッフの意思決定をよりスムーズにする。病床をより効率的に活用できるようにして、病院経営の安定化と患者向けサービス向上の両立を促す。同システムの活用が広がれば、病床の過不足の見直しや医療費の抑制にも一役買いそうだ。
病院全体の稼働状況や転棟・退院時期を一元管理
システム名は「MEDI-SINUS」。日本生命のグループ会社、ニッセイ情報テクノロジーが開発し、2018年秋に発売した。電子カルテの情報や検査、リハビリの結果などの情報を集約して一元管理する。病院全体の病床マップを作り、病棟ごとに病床の空き具合や看護師の負担度合いが一目で確認できる。
MEDI-SINUSを使うと医師や看護師、リハビリの担当者などそれぞれがシステム上で情報を参照できる。参照できる情報の一例が「包括医療費支払い制度(DPC)」に基づく収益性の指標だ。
DPCとは厚生労働省が定めた病気の種類と治療の内容に基づいて1日当たりの入院医療費を算出する方式のこと。医師が病床の移動(転棟)や退院を判断する際に使う。従来は医師が実施した診療行為の金額を積み重ねて算出する「出来高払い方式」が主流だった。
DPCでは入院期間が長くなるほど1日当たりの入院費が下がる。このため病院の収益性を高めるには、患者の状態と照らし合わせて適切なタイミングで患者を転棟させたり退院させたりする必要がある。
医師や病院スタッフはMEDI-SINUSを通じて病床の稼働状況を見える化することで、転棟や退院の時期を適切に判断できるようになる。従来は「事務の担当者が必要な情報を各所から集め、手作業で集計するケースが多かった」(ヘルスケアソリューション事業部医療ソリューションブロックの小池恒仁プロダクトビジネスマネジャー)。
病床を見える化すれば病床の過不足の見直しにもつながる。現在、国内の病床は一般的な入院患者を扱う「急性期」と呼ぶ病床の比率が最も高い。一方、今後需要が高まるとみられるのが「回復期」と呼ぶ病床だ。高齢者特有の慢性疾患や生活習慣病を抱える患者を受け入れる病床である。