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 内視鏡システムを生産する白河オリンパス(福島県・西郷村)が、「1個流し生産」を実現していることが分かった。オリンパスが2019年3月末に同工場を報道陣に公開して明らかになった。

白河オリンパス
白河オリンパス
内視鏡システムを生産する。(出所:オリンパス)
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 1個流し生産は、製品を1つずつ造ることで、異なる仕様の製品を造り分ける生産方法。需要のある製品を、需要のある時に、需要のある量だけ造る方法のため、在庫リスクを極力抑えられる利点がある。顧客ニーズがますます多様化し、多品種少量生産が当たり前のように求められつつある今、生産方法として1つの「理想解」となっている。ただし、同じ仕様の製品をまとめて造るロット生産に比べて高度な「現場力」を要するため、日本企業の中でも1個流し生産ができる工場は限られているというのが実態だ。

内視鏡システムを検査する様子
内視鏡システムを検査する様子
(出所:オリンパス)
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トヨタ生産方式を20年実践

 なぜ、白河オリンパスは1個流し生産ができるのか。同社が「トヨタ生産方式(TPS)を導入し、実践経験を20年間ほど積み上げてきた」(同社製造1部部長の加藤武氏)からだ。実現する上で最大の壁となったのは「人の意識改革だった」(同氏)。1個流し生産のためには、作業者を複数の工程の作業を担える「多能工」に育てる必要がある。この多能工化の負荷に堪えるには、在庫レスや品質不具合の早期発見などの利点を伝えながら、1個流し生産の作業に積極的に対応すべく作業者の意識を変えることが大切だったという。

 白河オリンパスが1個流し生産するのは、内視鏡の情報を画像に変換して映し出す映像プロセッサーや光源装置。筐体の内部に回路基板や部品を詰め込んだ、いわゆる「箱物」と呼ぶ製品である。この工場で特筆すべきは、回路基板(プリント回路基板)に電子部品を組み付ける実装ライン(以下、基板実装ライン)だ。

内視鏡システム
内視鏡システム
筐体で覆われた箱状の製品である映像プロセッサーや光源装置を白河オリンパスで造る。(写真:日経 xTECH)
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 白河オリンパスの基板実装ラインは、この工場内の組立工程だけではなく、オリンパスの国内の全事業所に回路基板を供給する拠点となっている。そのため、トータルで770種類の回路基板を生産している。基板実装ラインは3つ(3本)あり、月曜日から金曜日まで24時間稼働し続ける。1日当たり90種類の回路基板を合計4400枚ほど生産しているという。

 内視鏡システムの高性能化に伴い、映像プロセッサーに組み込む回路基板の枚数も、各回路基板に実装する部品の数も増えている。現在の回路基板は12枚で、部品点数は片面で1000個程度、両面で2000個ほど。部品点数は従来比で2割多いという。加えて、回路基板に実装する部品も小型化しており、高密度実装化が進んでいる。