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 フランスの自動車部品大手フォルシア(Faurecia)はクラリオンの買収を完了し、2019年4月1日付で新たな事業部門「フォルシア クラリオン エレクトロニクス(Faurecia Clarion Electronics、FCE)」を設立した。FaureciaのCEO(最高経営責任者)であるパトリック・コラー(Patrick Koller)氏は2019年4月2日の記者会見で「没入型の音響技術や低速ADAS(先進運転支援システム)といったクラリオンの独自技術は、当社に多大な貢献をもたらすだろう」と述べた。

Faurecia CEOのPatrick Koller氏(撮影:日経 xTECH)
Faurecia CEOのPatrick Koller氏(撮影:日経 xTECH)
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 フォルシアは自動車のシートやインテリアなどの領域で強みを持つ。主な顧客はドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen)、米フォード・モーター(Ford Motor)、フランス・グループPSA(Groupe PSA)、フランス・ルノー(Renault)、日産自動車などだ。

フォルシアの主要顧客(出所:フォルシア)
フォルシアの主要顧客(出所:フォルシア)
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 売上高は2018年に約175億ユーロ(125円/ユーロ換算で2.1兆円)。地域別の比率は欧州が51%、北米が25%でアジアは19%と少ない。クラリオンの買収により、アジアの売上高を伸ばす。また、売上高を2020年に200億ユーロ(2.5兆円)、2025年に300億ユーロ(3.7兆円)に増やす計画を掲げている。

2025年に300億ユーロ目指す(出所:フォルシア)
2025年に300億ユーロ目指す(出所:フォルシア)
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 フォルシアは自らを「インテグレーター」と呼んでおり、専門技術を持つ企業を買収したり、他社と提携したりすることで付加価値の創造を目指す。クラリオンの買収もその一環とする。ディスプレー分野ではジャパンディスプレイ(JDI)とも提携している。

インテグレーターを目指す(出所:フォルシア)
インテグレーターを目指す(出所:フォルシア)
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 2つの成長戦略を掲げている。持続可能な技術を目指す「サステイナブル・モビリティー」と、高度なコックピット技術を目指す「コックピット・オブ・ザ・フューチャー」である。2030年の市場規模はサステイナブルが510億ユーロ(6.4兆円)、コックピットが810億ユーロ(10.1兆円)に達するという(関連記事)。

2つの成長分野に注力(出所:フォルシア)
2つの成長分野に注力(出所:フォルシア)
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 コックピットでは、「個別化」や「没入化」といった点を重視している。個別化では、個人を識別し、座席位置などを最適な設定に変える。没入化では溶け込むような音響体験を目指す。これはゲーミング分野から取り入れた技術だと説明した。

 これらを実現するためにはソフトウエア技術が重要になるという。例えば、没入型の音響ではハードを変更せずに、クラウド経由でソフトウエアを更新することで音響の質を変える。クルマを購入した後、アプリの一つとしてダウンロードして利用することを想定する。

 クラリオンはこうした音響技術で強みを持つ。さらにセンサーや運転者監視システム、低速ADAS、インフォテインメント(IVI)、HMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)でも独自の技術を持つ。クラリオンの買収によって、こうした技術を吸収し、フォルシアの主力であるシートやインテリア事業の付加価値を高める狙いがある。

 一方、クラリオンにとっては「欧州や中国の市場が開ける」(コラー氏)と説明した。FCEはクラリオンのほか、フランス・パロット・オートモーティブ(Parrot Automotive)や中国コエージェント(Coagent)も統合した組織になるからだ。ParrotはAndroid開発の専門企業で、IVIのグローバルな成長が見込めるという。また、コエージェントは中国流の安価なモノづくりで強みを持つ。